お金と制度

セルフメディケーション税制は通常の医療費控除との選択で、あとから変えられません12,000円を超えた分が最高88,000円まで——対象は100成分と42成分、「一定の取組」は本人だけでよく、証明は名称の書かれた紙

2026-09-16 ・ 読了目安 10分

セルフメディケーション税制は通常の医療費控除との選択で、あとから変えられません|12,000円を超えた分が最高88,000円まで——対象は100成分と42成分、「一定の取組」は本人だけでよく、証明は名称の書かれた紙

セルフメディケーション税制は、ドラッグストアの買い物が1万2千円を超えると得になる制度、ではありません。 正確には医療費控除の特例で、通常の医療費控除との選択適用です。12,000円という低い入口の代わりに、88,000円という天井があり、一度選ぶと後から変えられない——この3つの行をセットで読まないと、確定申告の時期に判断を誤ります。この記事では、国税庁タックスアンサーのページ(No.1129・1131・1132・1133・1134)の行をそのまま並べて、制度の並びを整理します。

選択の構造——「併用」も「後からの変更」もできません

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、通常の医療費控除との選択適用となります。したがって、この特例の適用を受ける場合は、通常の医療費控除を併せて受けることはできません。また、これらのいずれかの適用を選択した後、更正の請求や修正申告によりこの選択を変更することはできません。

(国税庁 No.1129)

No.1131 は、この2つの行をさらに厳しく言い直しています。

セルフメディケーション税制の適用を受ける場合には、この特例の対象となる特定一般用医薬品等購入費以外の医療費の額が通常の医療費控除の適用下限額(10万円と総所得金額等の5パーセント相当額のいずれか低い方の金額)を超える場合であっても、通常の医療費控除を併せて受けることはできません。

(同 No.1131)

「安いほうを選んで、あまった医療費をもう一方に回す」はできません。 医療費が下限を超えていても併用はできない——ここが、この制度でいちばん多い誤解の形です。さらに変更の行は片方向ではなく、通常の医療費控除を選んだ側も変更できません(同 No.1131 の注)。

数字の並び——入口は低く、天井は88,000円

セルフメディケーション税制による医療費控除額は、実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金などで補填される部分を除きます。)から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)です。

(同 No.1129)

入口(超える部分を計算)天井
セルフメディケーション税制12,000円(保険金などで補填される部分を除く)88,000円
通常の医療費控除10万円と総所得金額等の5%のいずれか低い方—(この記事では触れません)

(同 No.1129・No.1131 より整理)

入口は12,000円ですが、控除されるのは「超えた部分」です。 12,000円ちょうどの買い物で何かが戻るわけではなく、超えた部分が所得から差し引かれます。また対象になるのは特定一般用医薬品等購入費だけで、病院の医療費は計算に入りません——病院の医療費が大きい年は、通常の医療費控除の入口(10万円5%)が問題になります。

対象の医薬品——100成分と42成分、そして「効能の並ぶ製剤」

(1)いわゆるスイッチOTC医薬品で、告示に掲げるもの(アシクロビル、アシタザノラストなど、令和8年4月1日現在100成分が定められています。)…および(2)…スイッチOTC医薬品以外の一般用医薬品で告示に掲げるもの(アスピリン、アセトアミノフェンなど、令和8年4月1日現在42成分が定められています。)…を有効成分として含有することにより、外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬もしくはかぜ薬または鼻炎用点鼻薬、鼻炎用内服薬もしくは抗ヒスタミン薬その他のアレルギー用薬としての効能または効果を有すると認められる製剤をいいます。

(同 No.1132)

読み取りのポイントは3つです。

  • 成分の数(100・42)は国税庁のページの行で、品目の一覧は厚生労働省の「対象品目一覧」にある——数と品目を同じ欄で扱わないこと(同 No.1129・1132 とも「対象品目一覧」を見るように書かれています)
  • 142成分が全部対象ではない。 (2)の42成分は、並んだ効能(鎮痛・解熱・鎮咳去痰・かぜ・鼻炎・アレルギー用薬)の製剤に限られます
  • 購入の枠には年が付いています。 同ページは「令和4年1月1日から令和8年12月31日までに購入したもの」と区分を置いています(その前の区分は平成29年1月1日から令和3年12月31日まで)。さらに(1)には、令和8年1月1日以降に購入したものについては「効果が低いと認められる医薬品を除く」という行が付いています

なお No.1129 は、対象商品は購入の際の領収書等に「セルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示されている」こと、一部にはパッケージに共通識別マークが載っていることを伝えています——表示とマークで対象かどうかを確かめる行です。

「一定の取組」は本人だけでよく、人間ドックの費用は入らない

適用には「健康の保持増進および疾病の予防への取組」としての一定の取組が要ります。No.1129 は6つに分けて並べています。

  1. 保険者が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)
  2. 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
  3. 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチン)
  4. 勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)
  5. 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、特定保健指導
  6. 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診

(同 No.1129 より整理)

ここで3つの行を落とさないことです。

①取組は申告する本人が行っていればよい。 「申告される方が『一定の取組』を行っている必要があります(申告される方と生計を一にする配偶者その他の親族の方が『一定の取組』を行っている必要はありません。)」(同 No.1129)——家族みんなが健診を受けている必要はありません。

②人間ドックなどの費用は控除に入らない。 「一定の取組(人間ドックなど)に要した費用は、セルフメディケーション税制による医療費控除の対象となりません。」(同 No.1129)——健診は取組の証明であって、計算に入る費用ではありません。

③数を書くときは出典とセット。 条文の側を説明する No.1133 は、同じ内容を5つにまとめています(1129 の1と2を(1)に統合)。「6つ」と「5つ」はどちらも正しい行で、数だけを書くと読者が別のページを開いたときに合いません。

なお No.1133 にしか無い行もあります。(2)は「任意のインフルエンザの予防接種など」まで言い及び、(3)は会社の健診を希望しないで他の医師の健診を受け、結果を証明する書面を事業者に提出した場合も含みます——会社の健診を受けずに自分で受けた人の扱いは、1133 の側でしか読み取れません。

証明は「紙があればいい」ではなく、名称の記載が要る

取組を明らかにする書類の具体例(No.1134)は5つ並んでいます。

取組該当する書類
インフルエンザの予防接種・定期予防接種(高齢者の肺炎球菌感染症等)領収書または予防接種済証
市区町村のがん検診領収書または結果通知表
職場の定期健康診断結果通知表(「定期健康診断」という名称または「勤務先名称」の記載が必要
特定健康診査領収書または結果通知表(「特定健康診査」という名称または「保険者名」の記載が必要
人間ドック・各種健診領収書または結果通知表(「勤務先名称」または「保険者名」の記載が必要

(同 No.1134 より整理。かっこの注はページのとおり)

書いていない結果通知表は、そのままでは使えません。 同ページは「上記の記載のある領収書や結果通知表を用意できない方は、勤務先または保険者に一定の取組を行ったことの証明を依頼し、証明書の交付を受ける必要があります」と続けます。

保存の行も読んでおきます。「令和3年分以後…令和4年1月1日以後に提出する場合に、確定申告書への添付または提示は不要ですが、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、税務署から提示または提出を求める場合があります」(同 No.1134 の注2)——不要なのは添付であって、保管ではありません。

間違えやすい3つの点

①「通常の医療費控除と併用できる」「あとで有利なほうに直せる」と読まない。 いずれか一方を選択し、医療費が下限を超えていても併用はできず、更正の請求や修正申告でも変更できません(変更できないのは双方向です)。

②「家族全員の健診が条件」「人間ドック代が控除に入る」と読まない。 取組は申告する本人が行っていればよく、健診の費用は取組の証明であって計算に入りません。

③対象の範囲を「市販薬なら何でも」と読まない。 100成分と42成分(令和8年4月1日現在)の製剤で効能の並ぶものに限られ、購入の枠は令和8年12月31日まで。レシートに対象商品である旨の表示があるか、パッケージの識別マークで確かめます。

この記事で扱っていないこと

  • 対象品目一覧の中身(厚生労働省のページにあり、成分数とは別の行です)
  • 厚生労働省の「一定の取組の証明方法について」(チャート)の手順の詳細(No.1134 は存在だけを指しています)
  • 通常の医療費控除の中身——入口の5%の線・家族の合算・市販薬の1万2,000円の行は、既出の記事で扱います
  • 医療費通知・マイナポータル連携と領収書の保存の話(別の記事の題材です)
  • セルフメディケーション税制の明細書の書き方そのもの

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出典