計算式は2段階で引きます
国税庁 No.1120 の原文です。
(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額
(1)が保険金など、(2)が10万円です。そして(2)にはこの注が付いています。
(注)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額
| 総所得金額等 | 差し引く額 |
|---|---|
| 100万円 | 5万円 |
| 150万円 | 7万5,000円 |
| 190万円 | 9万5,000円 |
| 200万円以上 | 10万円 |
「総所得金額等」であって、給与の収入金額ではありません。 給与収入がいくらならこの線に届くのかは、この記事では換算していません。源泉徴収票の金額をそのまま当てはめると間違えます。
控除額の上限は200万円です。原文は「医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です」。
保険金の引き方には、独立した注があります
ここが、計算を諦めさせる場所です。保険金で補てんされた分は引きますが、引く相手が決まっています。
(注)保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。
入院給付金が入院費より多くても、はみ出た分を通院や薬の費用から引く必要はありません。 「保険金が出たから対象外」と全体を諦めるのと、この扱いは別です。
例に出されているのは「生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など」です。
入るもの、入らないもの
No.1122 が対象を12項目で列挙しています。判断が割れやすいものだけ抜きます。
| 項目 | 対象 | 原文 |
|---|---|---|
| 通院の電車・バス代 | 入る | 「医師等による診療等を受けるための通院費」 |
| タクシー代 | 原則入らない | 「電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は控除の対象には含まれません」 |
| 自家用車のガソリン代・駐車場代 | 入らない | 「控除の対象には含まれません」 |
| 風邪薬 | 入る | 「風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となります」 |
| ビタミン剤 | 入らない | 「病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません」 |
| 健康診断の費用 | 原則入らない | 「健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません」 |
| 眼鏡・松葉杖・義歯 | 診療に直接必要なら入る | 「医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用」 |
| 家族に払った付添料 | 入らない | 「家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません」 |
| 家政婦への付添いの対価 | 入る | 「家政婦に病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれます」 |
| マッサージ・はり・きゅう | 治療なら入る | 「疲れを癒す、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません」 |
同じ「付添い」でも、家族に払えば対象外、家政婦に払えば対象です。 眼鏡も、視力矯正のために自分で買ったものが全部入るわけではなく、「診療や治療を受けるために直接必要な」という条件が先に立っています。
全体にかかる条件も1行あります。
その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額
市販薬だけなら、1万2,000円から
通常の医療費控除に届かない人に、もう1つの道があります。セルフメディケーション税制(No.1129)です。
実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金などで補填される部分を除きます。)から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)
| 比べる欄 | 通常の医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
|---|---|---|
| 線 | 10万円(所得200万円未満は5%) | 1万2,000円 |
| 上限 | 200万円 | 8万8,000円 |
| 対象 | 診療・治療・入院・通院費など | スイッチOTC医薬品等の購入費 |
| 前提条件 | No.1120 に取組の要件の記載なし | 本人が「一定の取組」をしていること |
「一定の取組」は6つが名指しされています。
- 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)
- 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
- 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
- 勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)
- 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、特定保健指導
- 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診
会社の健康診断を受けていれば、4つ目に当たります。 そして重要な限定が続きます。
なお、申告される方が「一定の取組」を行っている必要があります(申告される方と生計を一にする配偶者その他の親族の方が「一定の取組」を行っている必要はありません。)。
取組が要るのは申告する本人だけで、家族には要りません。 家族の分の購入費は合算できます。
そして、人間ドックの費用そのものは対象外です。
なお、一定の取組(人間ドックなど)に要した費用は、セルフメディケーション税制による医療費控除の対象となりません。
取組は「資格」であって「費用」ではない、ということです。
選び直しはできません
2つは併用できません。
この特例の適用を受ける場合は、通常の医療費控除を併せて受けることはできません。
そして、選んだあとの扱いが厳しいほうに振れています。
また、これらのいずれかの適用を選択した後、更正の請求や修正申告によりこの選択を変更することはできません。
出したあとで「もう一方のほうが多かった」と気づいても、直せません。 両方の金額を先に出して、大きいほうを選ぶ以外にありません。
何もしなくていい人
ここまでの条件を裏返すと、手続きをする意味が無い人がはっきりします。
| あなたの状況 | やること |
|---|---|
| 源泉徴収票の「源泉徴収税額」が0円 | 所得税は戻りません(後述) |
| 医療費が10万円(所得200万円未満は5%)に届かず、市販薬も1万2,000円に届かない | 何もしなくてよい |
| 会社の健康診断を受けておらず、ほかの「一定の取組」もしていない | セルフメディケーション税制は使えません |
源泉徴収税額の話は、国税庁 No.2030 が名指しで書いています。
源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額がない方(例えば、給与の源泉徴収票の「源泉徴収票」欄が「0」と記載されている方)は、申告しても還付される所得税額はありません。
(引用は原文のままです。 国税庁のページは「源泉徴収票」欄と書いていますが、源泉徴収票の中で金額が0と記載される欄は「源泉徴収税額」欄です。)
ただし、所得税が戻らないことと、住民税が変わらないことは別です。 医療費控除は住民税の側にもあり、地方税法317条の2第3項は「雑損控除額若しくは医療費控除額の控除…を受けようとする場合には…申告書を…提出しなければならない」と書いています。所得税の還付だけを見て「意味が無い」と決めないでください。
5年さかのぼれます
去年の分を出しそびれていても、まだ間に合います。
還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
確定申告の時期を待つ必要もありません。 原文は「確定申告期間とは関係なく」と書いています。No.2030 の還付申告の具体例には、「(9)多額の医療費を支出したとき(医療費控除)」が並んでいます。
年末調整では入りません
医療費控除は、年末調整の書類に欄がありません。勤務先に出す書類をどれだけ丁寧に書いても、医療費控除は入らないので、自分で申告する以外の道がありません。ふるさと納税の寄附金控除も同じ側にあります。
出す書類は明細書です。原文はこう書いています。
医療費の領収書から「医療費控除の明細書」または「セルフメディケーション税制の明細書」を作成し、確定申告書に添付してください。
領収書は添付しませんが、捨てられません。
確定申告期限等から5年を経過する日までの間、医療費の領収書…の提示または提出を求める場合があります。
医療保険者から医療費通知が届いている場合は、それを添付すると明細書の記載を簡略にできる、とも書かれています。
出典
| 番号 | 表題 |
|---|---|
| No.1120 | 医療費を支払ったとき(医療費控除) |
| No.1122 | 医療費控除の対象となる医療費 |
| No.1129 | 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】 |
| No.1132 | セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費 |
| No.2030 | 還付申告 |
対象になるスイッチOTC医薬品の一覧は、厚生労働省のページに「対象品目一覧」として置かれている、と No.1129 が案内しています。この記事では品目そのものは確認していません。
金額の線(10万円・5%・1万2,000円・8万8,000円・200万円)は、上の国税庁のページを開いて写したものです。




