2つの線は「かつ」です
国税庁の令和8年12月の広報「公的年金等を受給されている方へ」から引きます。
以下のいずれにも該当する場合には、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税及び復興特別所得税の確定申告は必要ありません
「いずれにも」なので、片方だけでは足りません。 年金が400万円以下でも、公的年金等以外の所得が20万円を超えれば申告が要ります。
「公的年金等以外の所得」に何が入るかも、同じページが表で挙げています。
| 所得の種類 | 中身 | 計算方法 |
|---|---|---|
| 給与所得 | 給与・賞与、パート収入など | 給与等の収入金額 − 給与所得控除等 |
| 雑所得(公的年金等以外) | 個人年金、原稿料など | 総収入金額 − 必要経費 |
| 配当所得 | 株式の配当や投資信託の収益分配金など | 収入金額 − 株式などを取得するための借入金の利子 |
| 一時所得 | 生命保険の満期返戻金など | (総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額【最高50万円】)× 1/2 |
個人年金は「公的年金等」ではありません。 国税庁 No.1600 も「生命保険契約や生命共済契約に基づく年金、互助年金などは公的年金等には該当しません」と書いています。同じ「年金」という言葉で、線の両側に分かれます。
注釈にも条件が1つあります。
※1 公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合に限ります(例えば、一定の外国年金が国外で支払われる場合には、源泉徴収の対象となりません)。
その前に ―― 雑所得がそもそも0円の人
国税庁 No.1600 の速算表(令和2年分以後、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合)です。年金の収入から引く額が、年齢で分かれます。
| 年齢 | 公的年金等の収入金額の合計額 | 雑所得の金額 |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 60万円以下 | 0円 |
| 65歳未満 | 60万円超 130万円未満 | 収入金額の合計額 − 60万円 |
| 65歳未満 | 130万円以上 410万円未満 | 収入金額の合計額 × 0.75 − 27万5千円 |
| 65歳以上 | 110万円以下 | 0円 |
| 65歳以上 | 110万円超 330万円未満 | 収入金額の合計額 − 110万円 |
| 65歳以上 | 330万円以上 410万円未満 | 収入金額の合計額 × 0.75 − 27万5千円 |
65歳以上で年金が110万円以下なら、公的年金等に係る雑所得は0円です。 ほかに所得が無ければ、所得そのものがありません。
この表に基礎控除は入っていません。 令和8年分の基礎控除は年末調整の改正で見直されており、所得によって額が変わるため、「年金がいくらまでなら所得税がかからないか」の合計額は、この記事では出していません。 上の表が答えるのは「雑所得がいくらになるか」までです。
遺族年金と障害年金は、最初から対象外です
日本年金機構の Q&A から引きます。
障害年金や遺族年金は、所得税および復興特別所得税の課税対象となっていないため(非課税)、障害年金や遺族年金を受けている人には、公的年金等の源泉徴収票は送付されません。
公的年金等の源泉徴収票が送付されるのは、老齢または退職を支給事由とする年金を受けている方だけとなります(年金生活者支援給付金は含まれません)。
源泉徴収票が届かないのは、手続きの漏れではありません。 課税対象ではないから作られていない、ということです。
ただし、社会保険料の証明は別です。
障害年金や遺族年金から社会保険料が特別徴収されている方に係る社会保険料額の納付証明に関しては、お住まいの市区町村の担当部局にお問い合わせください。
扶養親族等申告書は、出さなくても税率が上がりません
毎年秋に届く「扶養親族等申告書」を出し忘れて、損をしたのではと不安になる人がいます。日本年金機構の Q&A(2026年9月3日更新)は、はっきり否定しています。
提出した場合と提出しなかった場合で、所得税率に差はありません。 障害者控除や配偶者控除等、各種控除に該当しない方は、提出しなかった場合でも、申告書を提出された場合に比べ、多くの所得税、住民税が徴収されることはありません。
差が出るのは、控除に該当する人だけです。同じページが計算式を並べています。
| 源泉徴収税額の計算式 | |
|---|---|
| 申告書を提出した場合 | (年金支給額 − 社会保険料 − 各種控除額(基礎控除 + 配偶者控除等各種控除))× 合計税率(5.105%) |
| 申告書を提出しなかった場合 | (年金支給額 − 社会保険料 − 基礎控除)× 合計税率(5.105%) |
違いは「配偶者控除等各種控除」が引かれるかどうかだけで、税率は両方とも 5.105% です。 合計税率の内訳も書かれています——「合計税率(5.105%)=所得税率(5%)× 102.1%」。
それでも、該当する人にとっては効きます。
申告書を提出しない場合は、確定申告等を行わないと、所得税の源泉徴収や翌年の個人住民税において、障害者控除や配偶者控除等を受けることができません。
つまり「出さない」を選べるのは、控除に該当しない人だけです。 障害者控除・配偶者控除などに当てはまる人は、出さなかった分を確定申告で取り戻すことになります。
令和8年は、還付が年金の側から来ます
ここが今年だけの話です。国税庁の広報が、令和8年度税制改正についてこう書いています。
この改正により、受給者に還付すべき金額が生じる場合には、原則として、公的年金等の支払者から還付されますが、扶養親族等の所得要件の引き上げにより、新たに扶養親族等の要件を満たすこととなった親族に係る「扶養控除」等の適用を受けようとするなどの場合には、確定申告をする必要があります。
| あなたの状況 | やること |
|---|---|
| 基礎控除の見直しで還付が出る | 何もしなくてよい(年金の支払者から還付) |
| 所得の要件が上がって、新たに扶養親族の要件を満たす親族がいる | 確定申告 |
「改正で得をするはずだから申告しなければ」と考える必要はありません。 原則は支払者からの還付です。申告が要るのは、扶養に入る人が新しく増えた場合です。
改正の施行日も書かれています——「原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます」。
申告不要でも、したほうがいい場合
国税庁 No.1600 の注釈です。
(注1)この場合であっても、例えば、医療費控除や社会保険料控除など各種の所得控除の適用による所得税の還付を受けるための確定申告をすることができます。
「しなくてよい」は「してはいけない」ではありません。 源泉徴収された所得税があり、控除を足せば取り戻せるなら、申告する側に意味があります。広報の側も同じことを書いています——「源泉徴収税額や予定納税額があり、…還付を受けるためには、確定申告をする必要があります」。
住民税は、別の話です
いちばん見落とされる1行が、国税庁の両方のページに載っています。
(注2)公的年金等以外の所得金額が20万円以下で確定申告の必要がない場合であっても、住民税の申告が必要な場合があります。
住民税に関する詳しいことはお住まいの市区町村にお尋ねください。
所得税の「申告不要」は、住民税の「申告不要」ではありません。 そして住民税の側は、地方税法が「当該市町村の条例で定めるもの」として市区町村に預けている部分があり、年金だけの人の扱いは自治体で実際に違います。 国税庁が「お住まいの市区町村にお尋ねください」としか書けないのは、そのためです。
何もしなくていい人
| あなたの状況 | やること |
|---|---|
| 年金400万円以下 + ほかの所得20万円以下 | 所得税の確定申告は不要(納税額が出ても不要) |
| 65歳以上・年金110万円以下でほかに所得なし | 雑所得が0円 |
| 遺族年金・障害年金だけ | 非課税(源泉徴収票も届きません) |
| 扶養親族等申告書を出していない・控除に該当しない | 税率は変わりません |
| 令和8年の基礎控除の見直しで還付が出る | 年金の支払者から還付されます |
| 障害者控除・配偶者控除などに該当する | 申告書を出すか、確定申告で取り戻す |
| 医療費控除などで還付を受けたい | 確定申告(申告不要制度とは別) |
| 住民税 | 市区町村に確認(所得税とは別の判断) |
出典
| 資料 | 発行元 |
|---|---|
| No.1600 公的年金等の課税関係(速算表・確定申告不要制度・注1/注2) | 国税庁 |
| 公的年金等を受給されている方へ(令和8年12月の広報) | 国税庁 |
| 日本年金機構へ扶養親族等申告書を提出しなかった場合はどうなるのですか。(2026年9月3日更新) | 日本年金機構 |
| 障害年金や遺族年金を受けている人にも公的年金等の源泉徴収票は送付されるのでしょうか。(2024年12月27日更新) | 日本年金機構 |
速算表は国税庁のページに画像で置かれているものを書き写しました。 引用した数字はすべて、上の4つのページを開いて確かめたものです。




