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錯覚ラボ#05

静止画の輪が動いて見える?目の錯視を図で確かめる|錯覚ラボ #05

種明かし

  1. 輪が動いて見えますが、静止した輪の座標は変わりません。
  2. この「動き」は錯覚・錯視で、周辺ドリフト錯視、オオウチ錯視、ピンナ=ブレルスタッフ錯視と呼ばれる見え方です。
  3. 明暗の並びや向きを変えながら、感じる動きと図の実際の変化を、回のページの実験台で分けて確かめられます。

動画

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解説

この輪は、動いて見えますか。目の錯覚・錯視を、図の変化と比べて確かめます。静止画・平行移動・拡大縮小の3つを、青い輪郭と線で見てみましょう。

輪が回る、内側だけが滑る。そう感じたとき、図のどこを調べれば、実際の動きと比べられるでしょうか。この回では、周辺ドリフト錯視、オオウチ錯視、ピンナ=ブレルスタッフ錯視を使います。「動く」という一つの言葉を、位置の変化、内外の位置関係、中心の周りの回転に分けてみます。

見え方には個人差があります。動いて見えなくても、無理に見ようとしなくて大丈夫です。気分が悪くなったら、図から目を離して休んでください。

静止した輪を、青い輪郭で確かめる

まず、中央の点と輪の間で、視線を軽く移してみてください。下の画像は、時間によって変化しない静止画です。

見る図:4組の濃淡の輪。図の位置も色も時間では変化しません。
見る図:4組の濃淡の輪。図の位置も色も時間では変化しません。

輪が動くように感じられる場合があります。これは周辺ドリフト錯視です。名前の「周辺」は、視線を向けた所の周りを指します。輪を見た感じと、輪の区画が本当に移動したかは、別々に確かめられます。

次の図では、各円環の最初の暗い区画に、同じ座標から作った青い破線の輪郭を重ねています。外周だけでなく、色が切り替わる両端まで一致します。本編でも、見る前と後の区画をこの方法で比べています。

確かめる図:青い破線が暗い区画の外周・内周・色の境目に重なっています。位置の変化は0です。
確かめる図:青い破線が暗い区画の外周・内周・色の境目に重なっています。位置の変化は0です。

ここでの「0」は、図の位置の変化です。動く感じの強さを測って0と判定したわけではありません。動いて見える感じが残っても、輪郭の座標が同じという事実とは両立します。

図は、一辺を1000とする正方形の座標で作っています。これは図の中の単位で、画面の画素数やミリメートルではありません。4組それぞれに半径70〜120と140〜190の円環があり、各円環を48区画に分けています。全体では384区画です。記事の図も、本編と同じ座標と描画コードを引き継いだものです。

周辺ドリフト錯視は、なぜ動いて見えるのか

明暗の並びを変えて比べる

この図では、暗色、暗い灰色、明色、明るい灰色の順を、時計回りに繰り返しています。今回の並びの根拠にしたのは、KitaokaとAshida(2003)の研究です。異なる明るさの領域をどう並べるかが、見かけの動きに重要だと報告しています。

実験台の「静止画」では、形を移動させずに「明暗の並び」を変えられます。「逆の並び」は、同じ4色の順を逆にする条件です。色ごとの面積や形は保たれます。動く感じや方向が変わるかを見て、元の並びへ戻して比べてください。方向が必ず逆に見えるとは約束できません。

「対称な並び」は、暗色、暗い灰色、明色、暗い灰色の順です。こちらでは明るい灰色を使わなくなるので、灰色の割合も変わります。感じが弱まっても、「並び順だけが原因だった」と結論する比較にはなりません。

「明暗の差」を下げる比較もできます。設定を0にすると、全区画が同じ灰色になり、区画の境目がなくなります。元の模様と何が変わったかを確かめる条件として使ってみてください。

目の動きの研究結果と、反応の時間差という説

Otero-Millan、Macknik、Martinez-Conde(2012)は、「Rotating Snakes」という図で、目の小さく素早い動きやまばたきと、その後に感じる回転との関連を調べました。これは、目の動きと見かけの回転の関係を調べた結果です。このページを見ている人の目の動きや、今回の自作図での反応を測った結果ではありません。

説明の一つには、明暗の差に対する反応の時間差を使う説があります。異なる明暗への反応のタイミングの違いが、見かけの動きに関わるという考え方です。同じ2012年の論文の導入部で、先行研究の説として紹介されています。その論文が、この説の全体を証明したという意味ではありません。

KitaokaとAshidaの2003年の報告も、主に現象と図の作り方の規則を示したものです。並びの規則が分かることと、目や脳の仕組みがすべて分かることは違います。どの条件まで一つの説で説明できるかは、まだ分かっていません。

オオウチ錯視:図全体が動くのに、内側だけが滑る?

次の市松模様では、内側と周りで細長い区画の向きが違います。記事の画像は静止した一場面です。実験台の「内側と周り」で「動かす」を押すと、図全体が斜めに往復します。そのとき、内側だけが少し滑るような感じはあるでしょうか。

見る図:中央の円の内側と周りで、市松模様の向きが90°違います。全体が移動する試行の一場面です。
見る図:中央の円の内側と周りで、市松模様の向きが90°違います。全体が移動する試行の一場面です。

この現象がオオウチ錯視です。今回の図は800×800の正方形に、40×8の区画を並べています。長辺と短辺の比は5対1。半径210の円の内側では、同じ模様を90°回しています。

動かすときは、内側・周り・円の境目に、すべて同じ移動量を加えます。初期設定では、横方向も縦方向も、基準位置から最大12単位ずつ動き、3.2秒で1往復します。内側だけを別に動かす処理はありません。

確かめる図:青い円と縦横の基準線が、内側と周りをまたいでいます。動くときも図と一緒に移動します。
確かめる図:青い円と縦横の基準線が、内側と周りをまたいでいます。動くときも図と一緒に移動します。

青い線も模様と一緒に動きます。確かめるのは、内側と周りの位置関係の変化が0ということです。画面の中で図全体が止まっている、という意味ではありません。上の2枚だけでは往復の動きは分からないため、動いている間の一致は実験台で見比べてください。

一部分だけでは、動く向きを決めにくい

端が窓の外に隠れた横縞を考えてみてください。横へずらしても、窓の中の模様は変わりません。上下へずらすと、明暗の帯の位置が変わります。縞の一部分が伝える情報だけでは、全体がどちらへ動いたかを決めにくい場合があります。

Fermüller、Pless、Aloimonos(2000)は、こうした部分ごとの動きの情報をまとめる際の偏りで、オオウチ錯視を説明するモデルを提案しました。モデルとは、仕組みを考えるための計算上の説明です。同じ移動をしていても、向きの違う模様からまとめた動きの見積もりに差が生じる、という考え方です。唯一の確定した説明としては扱いません。

Hine、Cook、Rogers(1997)は、単純化した縞を使い、錯覚の強さが縞どうしの角度や、模様の細かさに依存することを調べました。ただし、その研究の縞と、今回の直交する市松模様は同じ条件ではありません。今回の90°が最も強い条件だとは言えません。

向きをそろえると、境目も消える

実験台では、内側の向きを90°から0°へ変えられます。この図では、向きがそろうと模様の位置もつながり、円の境目が見えなくなります。全体を動かす量は同じでも、向きとともに見える境目も変わります。

その条件で滑る感じが変わっても、違いを向きだけのせいにはできません。「何を変えたつもりか」に加え、「一緒に変わったものがないか」も確かめたい所です。元の90°へ戻して、もう一度比べてみてください。

ピンナ=ブレルスタッフ錯視:拡大縮小に回転が加わって見える?

この図には、ぼけた小さな縞模様が輪状に並んでいます。実験台の「輪の回転」では、真ん中の点のあたりを楽に見ながら「動かす」を押してみてください。図は大きくなったり小さくなったりします。そこに回転も加わって見えるでしょうか。

見る図:4つの輪の位置に、斜めのぼけた縞模様が並んでいます。倍率1.00×での静止した一場面です。
見る図:4つの輪の位置に、斜めのぼけた縞模様が並んでいます。倍率1.00×での静止した一場面です。

ピンナ=ブレルスタッフ錯視は、PinnaとBrelstaff(2000)が報告した相対運動の錯視です。今回の展示は、Luoら(2019)の研究にある縞型を参考にしています。全ての輪で同じ傾きの縞を使う図で、隣り合う輪が逆回転する形式としては紹介していません。Battaje、Brock、Rolfs(2023)の論文でも、画面上の拡大縮小で回転が加わって見える形式が扱われています。

基準の半径は85、135、200、280単位。各輪に24個ずつ、合計96個の縞模様を置いています。初期設定の倍率は0.90×〜1.10×で、6秒で1往復します。小さな模様の位置と大きさに同じ倍率をかけ、中心の周りの角度は変えません。

確かめる図:中心から伸びる24方向の青い放射線上に、各縞模様の中心があります。固定した条件での回転角は0°です。
確かめる図:中心から伸びる24方向の青い放射線上に、各縞模様の中心があります。固定した条件での回転角は0°です。

青い放射線に注目すると、実験台では小さな模様の中心が、それぞれの線上を往復します。回転していれば、中心は線から横へ外れるはずです。ここでの「回転角0°」は、拡大縮小する試行中の図の角度についての値です。拡大縮小そのものは、実際に起きています。

縞の向きと、局所の手がかり

オオウチ図で考えた横縞と同じように、斜めの縞でも、一部分だけでは動きの向きを決めにくい場合があります。縞の向きに沿った小さな領域の情報を、輪全体の動きへまとめる仕組みで、回転の感じを説明する研究があります。これは研究にもとづく説明であり、この図の座標を調べて直接証明できることではありません。

実験台の「細かい縞の向き」は、初期値が+45°です。この角度は、中心から外へ伸びる方向に対して、縞の明暗が変わる向きが何度傾くかを表します。縞の線そのものの角度とは違います。0°に変えてから同じ拡大縮小を始め、+45°へ戻して比べられます。

Luoらの研究は、傾きのある縞と傾きゼロの条件を比べています。ただし、研究の条件で得た結果を、今回の図・全端末・全員への保証にはできません。縞の向きを切り替える間には、小さな模様自体の向きが変わります。その変更中の回転と、向きを固定して拡大縮小する試行は分けて見てください。

三つの「変化0」は、同じ意味ではない

図実際に変えているもの変えていないもの
周辺ドリフト固定した並びの試行中は変化なし区画の位置と色。位置の変化0
オオウチ図全体を平行移動。初期設定は各軸最大12単位、3.2秒周期内側と周りの位置関係。その変化0
ピンナ=ブレルスタッフ図を拡大縮小。初期設定は0.90×〜1.10×、6秒周期条件固定の試行中の中心角。回転角0°

この表の数字は、図に設定した値です。人が感じた速さや錯覚の強さの測定値ではありません。目の動き、明暗への反応、向きの情報のまとめ方などを扱う研究がありますが、三つをどこまで一つの仕組みで説明できるかは、まだ分かっていません。

よくある問い

動いて見えないと、目に問題があるのでしょうか?

この展示から目の状態は判断できません。見え方には個人差があり、見えないことを異常と判定する基準もありません。錯覚が見えなくても、図の位置・内外の関係・角度を確かめる実験として試せます。

静止画だと分かれば、動く感じは消えますか?

消えるとは限りません。最初の図へ戻って、分かった後の感じを比べてみてください。区画の位置が変わっていないという確認と、本人が動きを感じるかという観察は、別々の記録です。

青い補助線を出すと、錯覚が弱くなってもよいですか?

構いません。補助線は位置を確かめるために加えた目印です。線を出す前と後は見える条件が違います。感じが弱まったことを、図に回転を加えなければならない理由にはしません。

スマートフォンでも、研究と同じ実験になりますか?

そのまま研究の追試にはなりません。表示の幅や見る距離で、模様の細かさの見え方が変わります。今回の数値は独自の展示条件で、研究の観察条件を満たすという表示ではありません。

実験台で、一つ変えて元へ戻す

この回のページの「試す」にある「動きの実験台」で、続きを確かめられます。まず元の条件を見る、一つだけ設定を変える、元へ戻して比べる、の順で試してください。

「静止画」では明暗の並び、「内側と周り」では内側の向き、「輪の回転」では細かい縞の向きから始めると、この記事の比較をたどれます。後ろの二つは「動かす」を押して開始します。「確かめる」で青い線を出し、元の感じと座標の変化を見比べてください。

気になった条件は「この条件をノートへ」で残せます。記録は端末内だけに保存され、外へ送られず、別の端末へ自動で同期されません。見え方には個人差があります。この実験の確認や記録は、視力・健康・性格の測定や診断ではありません。見えなくても続ける必要はなく、休みたいときは「図を隠す」を使えます。

出典

動画とこのページで使った事実・数字の出どころです。

  1. 立命館大学・著者公開論文(Kitaoka, A., & Ashida, H. (2003). Phenomenal characteristics of the peripheral drift illusion. VISION, 15(4), 261–262. 明暗の並びと図の設計規則を参照)psy.ritsumei.ac.jp/akitaoka/PDrift.pdf
  2. PubMed・論文の記録と要旨(Otero-Millan, J., Macknik, S. L., & Martinez-Conde, S. (2012). Microsaccades and blinks trigger illusory rotation in the “rotating snakes” illusion. The Journal of Neuroscience, 32(17), 6043–6051. 眼球運動との関連。反応の時間差の説は導入部で紹介された先行研究の説明)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22539864
  3. メリーランド大学・著者公開論文(Fermüller, C., Pless, R., & Aloimonos, Y. (2000). The Ouchi illusion as an artifact of biased flow estimation. Vision Research, 40(1), 77–96. 局所の動きの情報を統合するモデルを参照)users.umiacs.umd.edu/~fermulcm/postscript/ouchi-main.pdf
  4. PubMed・オオウチ錯視研究の要旨(Hine, T., Cook, M., & Rogers, G. T. (1997). The Ouchi illusion: an anomaly in the perception of rigid motion for limited spatial frequencies and angles. Perception & Psychophysics, 59(3), 448–455. 単純化した縞での角度と模様の細かさに関する結果。要旨の範囲を参照)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9136274
  5. PubMed・原報告の記録と要旨(Pinna, B., & Brelstaff, G. J. (2000). A new visual illusion of relative motion. Vision Research, 40(16), 2091–2096. 実際の動きと異なる方向の相対運動。要旨の範囲を参照)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10878270
  6. PMC・公開論文(Luo, J., et al. (2019). Going with the Flow: The Neural Mechanisms Underlying Illusions of Complex-Flow Motion. The Journal of Neuroscience, 39(14), 2664–2685. 縞型の配置と傾きの比較を参照。今回の図は独自の展示条件)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6445985
  7. PMC・実演形式を扱う公開論文(Battaje, A., Brock, O., & Rolfs, M. (2023). An interactive motion perception tool for kindergarteners (and vision scientists). i-Perception, 14(2), 1–6. 画面上の拡大縮小による実演形式を参照)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10064475

声・音・絵

  • 音楽(OpenTracks):「さみしいおばけと東京の月」しゃろう/「日曜の午後」KK。OpenTracks の利用規約に従って使用。
  • 効果音:Kenney Interface Sounds(click_001、confirmation_001/CC0)https://kenney.nl/assets/interface-sounds

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