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錯覚ラボ#02

目で見た大きさは、どこまで信用できる?|錯覚ラボ #02

種明かし

  1. エビングハウス・デルブーフ・ジャストローの3つで、同じ大きさの丸や帯が違う大きさに見えます。
  2. 周りを外したりコピーを重ねたりすると見え方が変わり、理由の候補の一つが「ふち」です。
  3. Webの実験台で周りや間隔を動かして、同じに見える円の大きさに合わせられます。

動画

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解説

真ん中の丸や、曲がった帯は、どちらが大きく見えますか。周りを外し、コピーを重ね、リングだけを広げて確かめます。

見た目だけで、同じ大きさかは決められません。この回で比べる中心の丸は同じ直径で、曲がった帯も同じ形・同じ大きさです。では、周りや並べ方を変えると、どう見えるでしょうか。

エビングハウス錯視:真ん中の丸はどちらが大きい?

まず、下の図の真ん中の丸だけを見比べてください。左、右、同じ、まだ決められない。どの印象でも、そのまま覚えておきましょう。

見るモード:小さい丸に囲まれた左の中心と、大きい丸に囲まれた右の中心を見比べる。
見るモード:小さい丸に囲まれた左の中心と、大きい丸に囲まれた右の中心を見比べる。

この型では、小さい丸に囲まれた中心の方が大きく見える人が多い、と研究資料で紹介されています。これがエビングハウス錯視です。「錯視」は、目で見た印象と図の寸法などが食い違う、目の錯覚を指します。

名前の由来となる研究者はエビングハウスです。本回の参考論文、UraleとSchwarzkopf(2023年)は、エビングハウスの1902年の文献を挙げています。歴史上の文献の書誌情報は、今回参照した研究論文からたどっています。

図の寸法で確かめると、直径はどちらも120 u

青い補助線を出すと、左右の中心円の直径はどちらも120 uです。右の円のコピーを、大きさを変えずに左へ動かすと、ふちも一致します。元の右の円は残っています。

確かめるモード:左右とも直径120 u。右の中心円の青い破線のコピーが、左の中心円のふちに重なる。
確かめるモード:左右とも直径120 u。右の中心円の青い破線のコピーが、左の中心円のふちに重なる。

uは図の中の単位です。 画面上のミリメートルや物理的なピクセルの数ではありません。端末に合わせて図全体が拡大・縮小されても、比較する二つには同じ倍率がかかります。

この図の条件左右
中心の丸の直径120 u120 u
周りの丸の半径24 u78 u
周りの丸の個数6個6個
中心と周りのふちどうしのすき間20 u20 u

半径は、円の中心からふちまでの長さです。表の「すき間」は中心どうしの距離ではなく、最も近いふちどうしの距離。同じすき間を保っても、周囲の円を大きくすれば、その中心の位置も外側へ動きます。

なぜそう見える? 周りとの比較だけで説明できる?

よくある説明は「小さい丸と比べるから大きく、大きい丸と比べるから小さく見える」というものです。これは典型的な図の見え方を言い表しています。ただ、それだけで、なぜその見え方になるかが全部分かったわけではありません。

Knol、Huys、Sarrazin、Jirsa(2015年)は、中心円の大きさ、周囲の円の大きさ、両者の距離を変えて調べました。その組み合わせによって、錯覚が出るかどうかや、見え方の向きも変わります。「小さい円で囲めば、いつでも中心が大きく見える」という説明には合わない結果があるのです。

輪郭どうしの関わりを考える説明も研究されています。輪郭とは形のふちのことです。UraleとSchwarzkopf(2023年)は、こうした説明とその限界を扱っています。仕組みの全体は、まだ分かっていません。この図の寸法が同じだという確認と、見え方の原因を確定することは、別の問いです。

周りを外す、すき間を広げる

実験台では中心円をそのままにして、周囲だけを外せます。戻したら、左右共通のすき間を20 uから50 uへ広げてみてください。その都度、いまの二つの中心がどう見えるかを比べます。「離せば必ず錯覚が消える」という約束はありません。

周囲の円の大きさを変える操作もできます。ただし、半径を変えると、円が中心の周りを埋める割合も変わります。そこで見え方が変わっても、「大きさだけが原因」とは切り分けられません。この回の図は、研究の条件を厳密に再現した追試でもありません。

ジャストロー錯視:曲がった帯は形ごと比べる

次は上と下の帯です。横幅だけに注目せず、形全体の印象で比べてみてください。

見るモード:同じ向きに並んだ、上と下の曲がった帯を見比べる。
見るモード:同じ向きに並んだ、上と下の曲がった帯を見比べる。

配置によって、同じ曲がった形が違う大きさに見えることがあります。これをジャストロー錯視と呼びます。Michael Bachの解説には、Joseph Jastrow(ジョセフ・ジャストロー)の1892年の図が紹介されています。ここでは、名前に結び付いたその文献を歴史上の参照先にしています。

横幅の一致と、形全体の一致

この図の帯は、同じ円環の一部を二つ複製したものです。円環は、輪の形。内側の半径240 u、外側の半径400 u、角度−120°から−60°の範囲を使っています。横幅は両方400 u、左右のまっすぐな切り口は160 uです。

ただし、横幅が同じというだけでは、形全体が同じとは限りません。そこで下の帯を残し、その青い破線のコピーを上へ動かします。

確かめるモード:横幅は上下とも400 u。下の帯を残したまま、そのコピーの全輪郭が上の帯に重なる。
確かめるモード:横幅は上下とも400 u。下の帯を残したまま、そのコピーの全輪郭が上の帯に重なる。

コピーは回転も拡大・縮小もしていません。左へ120 u、上へ120√3 u動かすだけで、円弧も切り口も一致します。ここで確かめられるのは、幅に加え、形も大きさも同じということです。

長いふちと短いふちを比べている、という仮説

近くに並ぶ、上の帯の短い内側のふちと、下の帯の長い外側のふち。その比べ方が全体の大きさの印象に関わる、という説明があります。完成した動画でも、これを説明の候補として紹介しています。

Bachは、近くの長さの比較を持ち出すだけでは、視覚の仕組みから錯覚を説明したことにはならない、と指摘しています。何に注目すると説明しやすいかと、原因が確定したかは分けて考える必要があります。ジャストロー錯視の仕組みも、まだ十分には分かっていません。

Imai(1960年)の実験では、内外の半径、帯の開きや切り口、間隔、配置などが調べられました。本記事で使うのは、抄録で確認できる「どの条件を調べたか」までです。錯覚が最も強くなる角度や、強さの割合は採用していません。

実験台では、最初の上をA、下をBと呼んで、上下を交換できます。名前は同じ帯に付いたままです。大きく見える印象はA・Bのどちらについてくるでしょうか。それとも置かれた位置についてくるでしょうか。帯を離す操作でも、形そのものを変えずに見比べられます。

デルブーフ錯視:変えるのは丸の外のリング

周囲の小さな円を、一つのリングに替えます。いまは、どちらの中心が大きく見えるでしょうか。

見るモード:左は近いリング、右は遠いリングに囲まれた中心円。
見るモード:左は近いリング、右は遠いリングに囲まれた中心円。

これがデルブーフ錯視です。UraleとSchwarzkopf(2023年)は、Delboeuf(デルブーフ)の1865年の文献を挙げています。標準的な図では、近いリングの中の中心が、遠いリングの中の中心より大きく見える人が多いとされています。

リングの半径と、見えるすき間を分ける

リングを外して測ると、中心の直径は両方120 uです。中心の丸を変えた場面ではありません。

確かめるモード:リングだけを外す。中心円の直径はどちらも120 uで、青いコピーも左の円に重なる。
確かめるモード:リングだけを外す。中心円の直径はどちらも120 uで、青いコピーも左の円に重なる。
この図の初期条件左右
中心の丸の直径120 u120 u
リングの線の中心までの半径84 u168 u
リングの線幅6 u6 u
中心円のふちからリングの内縁までのすき間21 u105 u

リングには線の太さがあります。左なら、リングの半径84 uから線幅の半分3 uと中心円の半径60 uを引き、見えるすき間は21 u。右も同じ計算で105 uです。半径とすき間は、別の値です。

左のリングだけを84 uから168 uへ広げると、中心円を含む左右の図形条件がそろいます。左の組のコピーを右へ動かせば、丸もリングも重なります。そのときの見え方も、自分で確かめてください。

リングをそろえて確かめる:中心円は変えず、両方のリング半径を168 uにした図。左の組の青いコピーが右に重なる。
リングをそろえて確かめる:中心円は変えず、両方のリング半径を168 uにした図。左の組の青いコピーが右に重なる。

ふちがリングに引かれて見える、という仮説

近いリングでは、丸のふちがリングの方へ引かれて見える、という説明候補があります。これは、元の黒い丸が実際に膨らんだという意味ではありません。

UraleとSchwarzkopf(2023年)が扱う輪郭の関わりは、有力な説明候補ですが、それだけで全ての結果が説明できるわけではありません。なぜそう見えるかの全体は、まだ分かっていません。 リングをそろえて図形が一致したことから、この仮説だけが正しいと決めることもできません。

よくある問い

同じ大きさにしか見えません。試し方が間違っていますか?

同じに見えても大丈夫です。見え方には個人差があり、この図でどのくらい錯覚が出るかは測定していません。強く違って見えることを参加の条件にはしていません。

「同じ」と知ったあとも違って見えたら、どう考えればよいですか?

その印象と、定規や重ね合わせで確かめた寸法を、両方覚えておいてください。「どう見えるか」と「図の値が同じか」は、別々に確かめられます。

この図から、錯覚の強さを何%と決められますか?

決められません。図の寸法は確認できますが、見る人の感じる差を測った値はありません。研究で報告された割合も、この図やあなたの見え方にそのまま当てはめられません。

三つとも、同じ仕組みで起こる錯覚ですか?

この回の資料だけでは、三つを一つの仕組みで説明できるとは言えません。円では周りの形や距離、帯では配置などを変えて確かめますが、共通の試し方があることと、原因が同じことは別です。

実験台の測定で、視力や健康が分かりますか?

分かりません。記録するのは、この画面・この条件で、同じに見えるように円を合わせた結果です。視力・健康・性格の診断や、能力の順位付けには使いません。

実験台で、自分の見え方を記録する

この回のページの実験台を開き、「周りの丸」「曲がった帯」「リング」を切り替えてみてください。まず補助線なしで印象を持ち、次に「青い定規で確かめる」。条件を変えたら、もう一度見比べます。「もっと試す」から、周りを外す操作や間隔の変更も選べます。

数値として記録する測定は、エビングハウスの円だけです。「同じに見える大きさへ合わせる」では、上の基準円を見て、下の周りのない円を調整します。小さい周り、大きい周り、周りなしを各2回、合計6回。小さい開始値と大きい開始値を使い、順番は混ぜられます。

自由実験の初期図とは条件が異なり、測定の基準直径は112・120・128 uから選ばれ、周囲とのすき間は24 uです。結果の割合は、次の式で計算します。

(合わせた円の直径 ÷ 基準の円の直径 − 1)× 100

たとえば基準が120 uで、132 uに合わせたら+10.0%、108 uなら−10.0%です。これは式を読むための説明用の例で、人の測定結果でも、あなたへの予測でもありません。

結果の青い0%線は、調整円と基準円が同じ直径になる位置です。一方、「周りなし」の平均線は、この画面で周りなしの円を合わせた記録。ほかの条件の平均がその線より右なら、基準に対して、平均するとより大きめに合わせたことを示します。左なら、より小さめです。0%線との比較とは区別し、各条件の二つの点も見てください。

見え方には個人差があり、画面の大きさや見る位置が変われば、結果も変わることがあります。測定は診断ではありません。見やすい向きで始め、途中で図の表示サイズが変わった場合は、最初から合わせ直します。記録は端末内の実験ノートに保存して見返せます。

ショート

出典

動画とこのページで使った事実・数字の出どころです。

  1. Frontiers in Psychology(Knol, H., Huys, R., Sarrazin, J.-C., & Jirsa, V. K. (2015). Quantifying the Ebbinghaus figure effect: target size, context size, and target-context distance determine the presence and direction of the illusion. Frontiers in Psychology, 6, 1679. DOI: 10.3389/fpsyg.2015.01679。条件による錯覚の有無・向きの違いを参照)frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fp…
  2. PubMed Central(Urale, P. W. B., & Schwarzkopf, D. S. (2023). Effects of cortical distance on the Ebbinghaus and Delboeuf illusions. Perception, 52(7), 459–483. DOI: 10.1177/03010066231175014。標準的な見え方、輪郭の関わりという仮説とその限界を参照)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10291393
  3. SAGE・上記論文の本文PDF(歴史上の原典の書誌は同論文の引用・参考文献欄による。Ebbinghaus, H. (1902). The principles of psychology(同論文の参考文献欄にある英語の書き方のまま). Veit, Leipzig, p. 437;Delboeuf, F. J. (1865). Note sur certaines illusions d’optique: Essai d’une théorie psychophysique de la maniere dont l’oeil apprécie les distances et les angles. Bulletins de l’Académie Royale des Sciences, Lettres et Beaux-Arts de Belgique, 19, 195–216。原典本文の直接確認ではない)journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/03010066231175014
  4. J-STAGE・心理学研究(Imai, S. (1960). Experiments on Jastrow Illusion. The Japanese Journal of Psychology, 30(5), 350–356. DOI: 10.4992/jjpsy.30.350。英文抄録の変数一覧のみを参照し、本文・正誤表の数式に基づく最適角度や効果量は不採用)jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/30/5/30_5_350/_articl…
  5. Michael Bach・Visual Phenomena & Optical Illusions(Jastrow Illusion。配置・重ね合わせと説明の限界を参照。同ページで紹介される原典:Jastrow, J. (1892). Studies from the laboratory of experimental psychology of the University of Wisconsin – II. The American Journal of Psychology, 4(3), 381–428(図28、p. 398)。原典本文の直接確認ではない)michaelbach.de/ot/geom-Jastrow/index.html

声・音・絵

  • BGM:「さみしいおばけと東京の月」しゃろう/「日曜の午後」KK
  • 効果音:Kenney Interface Sounds

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