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錯覚ラボ#03

目で見た色は、どこまで信用できる?|錯覚ラボ #03

種明かし

  1. 同時明度対比・チェッカーシャドウ・ムンカーの3つで、同じ値の色が違う明るさや色に見えます。
  2. 周りを覆ったり縞を外したりすると見え方が変わるので、周りの影や縞が明るさの見え方を変えていると分かります。
  3. Webでは周りや縞の幅を動かして、その設定での見え方を実験ノートに残せます。

動画

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解説

真ん中のパネルは、どちらが明るく見えますか。暗い周りと明るい周り、影の外と中、色の縞の間で、同じ値の色を見比べてみましょう。

この回で確かめるのは、画像を作る色の値と、自分に見える色は、分けて扱えるということです。同時明度対比、チェッカーシャドウ錯視、ムンカー錯視の三つを使います。同じに見えても、違って見えても、その見え方のまま参加できます。

同時明度対比:周りだけを外すとどうなる?

まず、左右の小さな灰色の面を見比べてください。ここでは、この面を「パネル」と呼びます。周りの正方形ではなく、真ん中のパネルの明るさを比べます。

見る図:暗い周りと明るい周りに置いた、左右の灰色のパネル。
見る図:暗い周りと明るい周りに置いた、左右の灰色のパネル。

暗い周りのパネルが明るく、明るい周りのパネルが暗く見えることがあります。では、周りを外した図を見てみましょう。

確かめる図:周りだけを外し、同じ位置と大きさのパネルを残した。青い破線は比較する範囲を示す。
確かめる図:周りだけを外し、同じ位置と大きさのパネルを残した。青い破線は比較する範囲を示す。

確かめた事実:両方とも RGB 128/128/128 です。 周りを外す前後で、パネルの塗り・位置・大きさは変えていません。青い線は確認用の印で、パネルの色を示すものではありません。

この現象を「同時明度対比」と呼びます。同時に見ている周りの明暗によって、パネルの明るさが違って見える錯覚です。「対比」は、周りから離れる方向への見え方の変化を指します。暗い周りの中ではより明るく、明るい周りの中ではより暗く感じる、という方向です。

なぜそう見える? 周りとの比較と、説明の限界

周りとの比較が明るさの見え方に関わる、という説明があります。ただし、「対比」という名前を付けただけで、その比較を目や脳がどう行うかまで説明できたわけではありません。

Pawan Sinhaほかの2020年の研究は、見る仕組みの早い段階での処理を支持する証拠を示しています。経験を通じた場面の読み取りだけで説明しようとする考えには、それだけでは足りない可能性があるということです。一方で、この研究を「網膜だけで起きる」と言い換えたり、影や縞を含むすべての色の錯覚が同じ仕組みだと結論したりはできません。

この図での値の一致は確認できますが、どの仕組みがどれだけ見え方に寄与するかまで、この確認で決まるわけではありません。細かな仕組みの全体は、まだ分かっていません。

チェッカーシャドウ錯視:影の外と中の灰色

次は、影のある市松模様です。盤面の外にあるA・Bの名札から、灰色の矢印が指すマスを見てください。Aは影の外の暗いマス、Bは影の中の明るいマスです。どちらが明るく見えるでしょうか。

見る図:市松模様の上に角柱と影がある。盤面外のAは影の外のマス、Bは影の中のマスを指す。
見る図:市松模様の上に角柱と影がある。盤面外のAは影の外のマス、Bは影の中のマスを指す。

最初の見え方を覚えたら、周りを覆った図へ進みます。二つのマスは元の場所に残しています。

確かめる図:A・Bのマス以外を紙色で覆った。青い破線は、残した二つのマスの外側にある。
確かめる図:A・Bのマス以外を紙色で覆った。青い破線は、残した二つのマスの外側にある。

さらに、盤面を戻し、それぞれのマスの中央から小さなパネルのコピーを取り、下の同じ背景に並べます。

確かめる図:元の盤面を残し、A・Bの中央から採った同形のコピーを下に並べた。コピーの外側に青い破線がある。
確かめる図:元の盤面を残し、A・Bの中央から採った同形のコピーを下に並べた。コピーの外側に青い破線がある。

確かめた事実:A・Bも、下のコピーも RGB 128/128/128 です。 コピーは同じ大きさの範囲から採り、平行に移したものです。色を塗り替えたり、拡大して一致させたりしていません。図を作るときの計算でも、中心の一点だけでなく、指定したA・Bのマスの内部全体で値が一致することを確認しています。

これは、Edward H. Adelsonの図で知られる「チェッカーシャドウ錯視」の自作図です。この回では、視覚研究者Michael Bachによる実演と解説を参考にしています。

なぜそう見える? 物の色と照明を分けるという説明

白い物も、影に入れば、そこから届く光が減ります。それでも、白い物として見分けられることがあります。この図でも、隣のマスや影のやわらかな縁は、「ここは照明が弱い場所だ」と読む手がかりになります。

見る仕組みが、物の表面の色と、そこに当たる照明を分けようとする、という説明があります。この考え方では、影の中のBが、Aより明るい表面として見えることを理解できます。

ただし、「影だと知っているから」の一言では十分ではありません。周りとの比較も関わり、照明・形・周囲の配置をどう扱うかについて複数の説明があります。Webで角柱だけを外しても影と盤面は残るので、その操作だけで「影の理解が原因だった」とは決められません。

P. George Lovell、Kenneth C. Scott-Brown、Ioan E. Smartの2026年の研究は、説明を考える補足資料です。ただし、対象は別の「checker-block」の図です。その研究の結果の大きさや、どの手がかりが強かったかを、今回の平らな市松模様へそのまま当てはめません。この図の見え方を一つの原因で説明しきれるかは、まだ分かっていません。

ムンカー錯視:縞の間の色だけを比べる

今度は明るさだけでなく、色合いを比べます。紫と緑の縞そのものではなく、左右のパネルの、縞に隠れていない部分を見てください。同じ色合いに見えますか。

見る図:紫と緑の横縞の間に、左右のパネルが見える。左の前面には紫、右の前面には緑の縞がある。
見る図:紫と緑の横縞の間に、左右のパネルが見える。左の前面には紫、右の前面には緑の縞がある。

次の図では、パネルより前にある縞と、後ろにある縞を一緒に外しています。下にあった二つのパネルは、そのままです。

確かめる図:縞だけを外し、元の位置・形・塗りのパネルを残した。青い破線は左右の比較範囲を示す。
確かめる図:縞だけを外し、元の位置・形・塗りのパネルを残した。青い破線は左右の比較範囲を示す。

確かめた事実:縞の間に見えていたパネルは、左右とも RGB 232/216/136 です。 同じなのは下にあるパネルの色です。紫や緑の縞まで含めた画像全体が同じ、という意味ではありません。

これは「ムンカー錯視」です。Munkerの1970年の原著が参照される色の錯覚で、ここではMichael Bachの解説、北岡明佳の2015年の研究発表、David Novickと北岡明佳の2021年の論文を手がかりにしています。原著の全文を確認したという扱いにはしていません。また、無彩色の明暗を扱うMunker–White錯視と、この回の色合いの錯覚は区別します。

なぜそう見える? 同化と対比

周りの色へ近づく方向の変化を「同化」、周りから離れる方向の変化を「対比」と呼びます。Novickと北岡の論文では、ムンカー錯視にこの両方が関わると説明しています。細かく入り組んだ縞の影響を、大きく離れた色の面と同じようには扱えない、という見方です。

ここで注意したいのは、縞の色を平均すれば、その人が見る色をすべて計算できるわけではないことです。どこにどの色が接しているか、縞が視野の中でどれほど細かいかも関わります。「同化と対比が関わる」という説明と、その人の見え方を正確に予測できることは別です。どの場所の情報を、どの広さで使うのかまで含めた詳しい仕組みは、まだ分かっていません。

「同じ色」の範囲と、図の実際の大きさ

RGBは、赤・緑・青の指定値です。ここで示す数値は、すべて元の図の値です。同じ色の指定の仕方の中で、三つの値が一致することを確かめています。別々の画面から同じ光が出ることや、実物の塗料が同じことを調べた結果ではありません。

比較する対象左/AのRGB右/BのRGB元の設計での大きさ
同時明度対比のパネル128/128/128128/128/128どちらも120×120
影の図から取り出すパネル128/128/128128/128/128どちらも盤面上の40×40から採る
縞の下にあるパネル232/216/136232/216/136どちらも幅160・高さ240、角を落とした同形

大きさは、幅1000・高さ600を基準にした図の内部の単位です。影の40×40は、斜めに描く前の盤面上の範囲です。画面の画素数や、実物のミリメートルではありません。記事や端末で縮小されても、左右には同じ倍率を使います。影の盤面は6×6で、元の1マスは100×100です。

また、縞の境界のように色が混ざりやすい所は、パネルの元の色を確かめる対象から外します。画像の値、画面の表示、自分の見え方を区別すると、「同じなのに違って見える」のどこが同じかを追えます。

条件を変えると、何を確かめられる?

周りの明暗差を小さくする

最初の図の周りは、暗い側が RGB 48/48/48、明るい側が RGB 224/224/224 です。実験台の「周りの明暗差」を小さくすると、最後は周りもパネルも RGB 128/128/128 になります。その間もパネルの指定値は固定です。

紙色へ周りを外す操作と、周りをパネルと同じ灰色に近づける操作は、違う確かめ方です。まずどちらか一方を試し、「見るに戻る」で戻したときの見え方と比べてください。

影の周りを隠す、角柱だけを外す

「影」では、周りを隠す量と、角柱を表示するかどうかを変えられます。A・Bを残して周りを隠す操作と、角柱だけを外す操作を、一つずつ試せます。影を濃くしてBそのものの値を変える実験ではありません。

縞の幅や、見る大きさを変える

完成版の縞幅は、内部の単位で32、紫と緑を一組にした周期は64です。Webでは幅12〜32を2刻みで試せます。表示される設定位置は、錯覚の強さの点数ではありません。

Novickと北岡の論文は、拡大して縞の間隔が視野内で広くなりすぎると同化が弱まり、逆に細かすぎると単なる空間的な混色に近づく、と説明しています。「細くすればするほど必ず強くなる」という考えには合いません。ただし、この図でどこから変わるかは、画面・見る大きさ・人にもよります。誰にでも共通する境目の数値は、この実験では測っていません。

「一部を拡大」は、左右それぞれの同じ72×72の範囲を3倍にします。元の図と一緒に見れば、縞がどこでパネルに接しているかを追えます。色の平均を示す図や、錯覚の強さを測る図ではありません。

よくある問い

同じRGBなら、必ず同じ色に見えるのですか?

いいえ。同じ図の中で指定値が同じでも、周りの明暗・影・縞によって違って見えることがあります。RGBの一致は画像のデータについての事実で、すべての人の見え方が一致するという約束ではありません。

答えを知っても違って見えるのは、なぜですか?

値を知ることと、その場での色の見え方は分けて考えられます。答えを知った後も違って見えることも、同じに見えることもあります。覚えた答えに合わせず、今どう見えるかを記録してください。この回の確認だけで、知識が見え方にどう働くかの詳しい仕組みまでは決められません。

縞の図は、左右の画像を丸ごと同じにしてあるのですか?

いいえ。同じなのは、縞に覆われていないパネルの値と、下にあるパネルの塗りです。前面に重なる縞の色は左右で異なります。縞を含む領域全体が同一の画像だとは言っていません。

錯覚が見えなかったら、視力に問題があるのでしょうか?

この実験の見え方から、視力や健康について判断することはできません。見え方には個人差があり、画面や図の大きさなどの条件でも変わります。「同じに見える」「決められない」も残せる観察です。ここでの記録は診断ではありません。

自分で試す:色の実験台へ

このページの「試す」から実験台を使えます。「大きな画面で開く」でも操作できます。最初は「明暗」で灰色のパネルを見て、「周りを外して確かめる」を押してみてください。

  1. 「見るに戻る」で周りを戻し、一つの条件だけを変えます。
  2. 「影」「縞」でも、まず見比べてから確かめます。
  3. 気になった設定を「この設定をノートに残す」で保存します。「違って見える」「同じに見える」「決められない」から選び、ひとことも添えられます。
  4. 保存した「この設定を開く」で再び試します。図の大きさが前の記録と違う場合は、その条件の違いも考えて比べます。

見え方には個人差があります。この回は色を合わせる測定や、錯覚の強さの採点を行いません。実験ノートは見え方の記録であり、診断ではなく、視力・健康・性格を調べるものでもありません。保存した記録は端末内に残り、ページの記録機能から外部のサーバーへ送られません。

最初の図へ戻ったとき、今はどう見えるでしょうか。色の値を確かめる手段を持ったまま、自分の見え方も言葉にしてみてください。

ショート

出典

動画とこのページで使った事実・数字の出どころです。

  1. MIT・Sinha Lab(Pawan Sinha et al. (2020). Mechanisms underlying simultaneous brightness contrast: Early and innate. Vision Research, 173, 41–49。早い視覚処理への証拠について。書誌・抄録は)web.mit.edu/sinhalab/Papers/Brightness_VR2020.pdf
  2. PubMed(にも掲載)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32464426
  3. Michael Bach(Adelson's Checker-shadow illusion。Edward H. Adelsonの現象を扱う研究者の実演と解説。影の外と中、周りを覆う確認、照明と表面を分ける説明の参考)michaelbach.de/ot/lum-adelsonCheckShadow
  4. 立命館大学・北岡明佳の著者掲載論文(David Novick & Akiyoshi Kitaoka (2021). The confetti illusion. Journal of Illusion, 2:6152。pp.2–3のムンカー錯視・同化と対比・縞の間隔、pp.6–7の議論を参照)psy.ritsumei.ac.jp/akitaoka/confetti_illusion-JOI2021-6152…
  5. Michael Bach(Munker Illusion。Munker(1970)の原著への参照を含む研究者の実演と解説。原著を直接読んだ文献としては扱わない)michaelbach.de/ot/col-Munker
  6. 立命館大学・北岡明佳(北岡明佳(2015)「乗算的および加算的色変換による色の錯視」。研究発表の「ムンカー錯視との関係」「Munker illusion: standard」を参照)psy.ritsumei.ac.jp/akitaoka/sakkakuWS2015.html
  7. PubMed Central(P. George Lovell, Kenneth C. Scott-Brown & Ioan E. Smart (2026). Understanding the image cues driving the switch from brightness to lightness responses in the Adelson checker-block illusion。別のchecker-blockを対象とする補足研究。今回の図へ結果の数値を転用していない)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12876641
  8. W3C(CSS Color Module Level 4 — Sample code for Color Conversions。影の図を作る際のsRGBの線形化と逆変換の参考。人の視覚の仕組みを示すモデルではない)w3.org/TR/css-color-4

声・音・絵

  • 効果音:Kenney Interface Sounds(CC0)。判断中の小さい空気音はタメラボ制作。

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