冷蔵庫はどうやって冷やす?裏側が温かい理由 |しくみの中身 #03
答え
- 冷蔵庫の中の熱を冷媒が運んで部屋へ渡すので、裏側が温かくなります。
- 冷媒は圧縮機・凝縮器・膨張部分・蒸発器を一周し、姿を変えながら熱を運びます。
- 放熱する場所や必要なすき間は機種によって異なり、内部の図は模式図です。
動画
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解説
動画の流れ
冷蔵庫の中は冷たいのに、裏側はなぜ温かいのでしょう? 冷蔵庫は、中から受け取った熱を部屋へ渡しています。運転に使った電気のエネルギーも、最後には熱として外へ出ます。あの温かさは、冷やす働きとつながっています。
ここでは、典型的な圧縮式冷蔵庫の主要部品を取り出した模式図で、冷却の仕組みをたどります。圧縮機はピストン式、膨張部分は毛細管を使う例です。実物の配管の位置・太さ・色や、液体と気体の割合を再現した図ではありません。放熱する場所も機種によって異なり、側面や前面が温かくなる製品もあります。
30秒でわかる、冷蔵庫の中の流れ
配管の中では、熱を運ぶための物質「冷媒」が、気体と液体に姿を変えながら巡っています。典型的には、次の四つの場所を通ります。
- 圧縮機で気体を押し縮め、圧力と温度を上げる。
- 凝縮器で部屋へ熱を渡し、気体を液体に戻す。
- 膨張部分で圧力を下げ、冷えた液体と気体の混合にする。
- 蒸発器で冷蔵庫の中から熱を受け取り、残った液体を気体にする。
気体になった冷媒は圧縮機へ戻ります。この繰り返しを「冷凍サイクル」と呼びます。冷媒の道は閉じた輪ですが、冷蔵庫の中から受け取った熱の行き先は部屋です。

外から見える温かさと、中の部品
この模型では、冷蔵庫の下部にある丸い容器が圧縮機、背面から離して描いた蛇行する管が凝縮器です。凝縮器の先にある細い管が膨張部分で、中の空気から熱を受け取る管が蒸発器です。これらは、つながりが見えるように広げてあります。
裏側の管が温かくなるのは、凝縮器で冷媒から周囲へ熱が渡るためです。冷蔵庫の中を冷やす工程と、外へ熱を出す工程は、同じ配管の輪で結ばれています。冷やしている箱の外側が温かいことは、この仕組みの中で一緒に起こります。
ただし、どの冷蔵庫にも模型のような露出した背面の管がある、という意味ではありません。側面や前面などに放熱用の管を内蔵した機種もあります。また、側面や仕切り板の温かさには、露つきを防ぐ管の働きが関係する場合もあります。家の冷蔵庫と図を比べるときは、管の見た目より、熱を受け取る側と外へ渡す側の役目に注目してください。
冷媒・空気・熱を分けて見る
棚の周りを巡る空気と、配管の中を巡る冷媒は別のものです。冷媒は密閉された回路を通り、正常な運転では食品や中の空気に混ざりません。気体になった冷媒も、部屋へ排気されるのではなく、管を通って次の部品へ進みます。
では、冷媒が外へ出ないのに、どうして部屋が熱を受け取るのでしょう。熱は管の壁を越えて移るからです。凝縮器では「冷媒→管の壁→部屋の空気」、蒸発器では「冷蔵庫の中の空気→管の壁→冷媒」という向きになります。中の空気と冷媒を混ぜなくても、熱を受け渡せます。
図の細い矢印は流れの向き、太いオレンジの矢印は熱の移動を示します。オレンジの帯を、冷媒が漏れ出す様子として読む必要はありません。矢印の太さや液面・泡の大きさも、熱の量や実際の流れ方を測ったものではなく、道と状態を見分けるための表現です。
四つの部品で、冷媒はどう変わる?
一周を追うときは、「液体か気体か」と「圧力が高いか低いか」を分けると整理できます。圧力は、冷媒が周囲を押す強さのことです。ここでいう高い・低いは、回路内の場所どうしの比較で、大気圧との比較ではありません。

| 通る場所 | 入るとき | 出るとき | 主な変化 |
|---|---|---|---|
| ①圧縮機 | 気体 | 気体 | 圧力・温度が上がる |
| ②凝縮器 | 気体 | 液体 | 部屋へ熱を渡す |
| ③膨張部分 | 液体 | 液体+気体 | 圧力が下がり、冷える |
| ④蒸発器 | 液体+気体 | 気体 | 中から熱を受け取る |
表は、この模型が正常に運転するときの入口と出口を整理したものです。②は高圧側、④は低圧側にあります。気体だから高圧、液体だから低圧、と決まるわけではありません。
①圧縮機:冷やす途中で、温度を上げる
蒸発器を出た気体は、まず圧縮機へ入ります。この模型では、電気で回るモーターがピストンを往復させます。ピストンが押し込むと、気体の入った空間が狭まり、冷媒の圧力と温度が上がります。圧縮機には、回路の冷媒を流し続ける役目もあります。
冷やす機械なのに、ここで温度を上げるのは不思議に見えるかもしれません。この先の凝縮器では、部屋の空気へ熱を渡す必要があります。そのためには、冷媒の側が部屋より温かい状態になっていなければなりません。圧縮は、その放熱へつながる工程です。
ここで押さえたいのは、圧縮機の出口でも冷媒は気体だということです。押し縮める工程だけで、液体になるわけではありません。なお、ピストンは構造を説明する一例で、すべての機種の圧縮機がこの形という意味ではありません。
②凝縮器:気体を液体へ戻し、熱を部屋へ渡す
温度と圧力が上がった気体は、凝縮器へ進みます。ここでは、部屋の空気より温かい冷媒から、管の壁を通して周囲へ熱が移ります。外へ熱を渡すことを「放熱」といいます。冷媒は熱を渡しながら気体から液体へ戻り、この変化を「凝縮」と呼びます。
これが、温かい裏側につながる場所です。部屋は冷媒から熱を受け取りますが、冷媒そのものは管の中に残ります。図の出口にあるのは、高い圧力の液体です。液体になったことと、冷蔵庫の中を冷やせるほど冷たくなったことは、分けて考えてください。ここでは、まだ次の減圧が必要です。
凝縮器の全区間が同じ温度というわけでもありません。実機には、入ってきた気体の温度が下がる区間や、液体になった後にさらに冷える区間もあります。この図は、それらの細部を省き、熱を渡して液体へ戻る役目を示しています。
③膨張部分:圧力を下げ、液体を残したまま冷やす
凝縮器を出た液体は、膨張部分へ向かいます。この模型の「毛細管」は、細く長い管です。冷媒を通りにくくして流れを制限します。圧縮機が冷媒を動かす働きと、この制限が組み合わさることで、運転中の回路に圧力の差が保たれます。
冷媒が毛細管を進み、圧力が下がると、一部の液体が気体になります。その蒸発に伴って、残る液体も冷えます。出口でできるのは、冷えた液体と気体が混ざった状態です。この段階では、まだ液体が残っています。
細い管の出口の一点で、すべてが一度に変わると考える必要はありません。圧力は管に沿って下がります。図では細い部分を大きく描いていますが、その長さや太さ、泡の割合は製品の寸法や測定値ではありません。次の蒸発器へ、低い圧力の冷媒を送り出す場所として見てください。
④蒸発器:中の熱で、残った液体を気体にする
蒸発器に入った冷媒は、冷蔵庫の中の空気よりさらに冷たい状態です。そのため、中の空気から管の壁を通して冷媒へ熱が移ります。熱を受け取ることを「吸熱」といいます。液体が気体に変わる「蒸発」をしながら、冷媒は中の熱を受け取ります。
膨張部分を出たときに残っていた液体は、ここで減っていきます。熱を渡した中の空気は冷えます。この模型の正常な運転では、蒸発器の出口で冷媒は気体になり、帰りの管から圧縮機へ戻ります。
蒸発器と凝縮器は、どちらも管の壁を通して熱を受け渡す場所です。違うのは温度の関係と熱の向きです。蒸発器では中の空気より冷たい冷媒が熱を受け取り、凝縮器では部屋より温かい冷媒が熱を渡します。この二つを結ぶために、圧縮と減圧が働いています。
冷たい場所でも、液体は蒸発できる
図の泡を見ると、熱い鍋の沸騰を思い浮かべるかもしれません。しかし、液体が沸騰する温度は、物質の種類と圧力によって変わります。冷蔵庫では、蒸発器の圧力のもとで、中の空気より低い温度でも蒸発できる冷媒を使っています。泡があることだけで、高温だとは判断できません。
さらに、熱を受け取ると、必ず温度がどんどん上がるわけでもありません。液体が蒸発する間は、温度がほとんど変わらないことがあります。受け取ったエネルギーが、液体を気体へ変えるために使われるからです。
中の空気が冷たくても、それより冷たい冷媒へ熱を渡すことはできます。蒸発器を読むときには、泡や色の変化と一緒に「中の空気→冷媒」という熱の矢印を見てください。何でも圧力を下げれば同じ温度になる、という説明ではなく、冷媒の種類と運転する圧力が関係しています。
部屋へ出る熱には、電気の分も加わる
一周を引いて見ると、冷媒は最初の場所へ戻り、中から受け取った熱は部屋へ渡ります。そこへ、機械を動かすために使った電気のエネルギーも加わります。

部屋へ出す熱=冷蔵庫の中から運んだ熱+電気で加わったエネルギー
これは、エネルギーの出入りを足し合わせる「収支」です。安定して繰り返す運転で、冷媒が一周した後、回路に蓄えるエネルギーが元へ戻る条件を考えています。同じ期間について、入った分と出た分を比べます。冷蔵庫全体を見るときは、圧縮機だけでなく、ファンなどへの電気入力や、機械の中で熱になる分も含めます。
この条件では、部屋が受け取る熱は、中から取り出した分に電気入力分を足したものです。冷媒が輪を巡ることと、中の熱が部屋へ移ることを分けると、温かさの理由を最後まで追えます。図は熱の量の比率を示すグラフではなく、実機の効率や消費電力を表してもいません。
扉を開けたままなら、部屋も冷える?
冷たい空気が出てくるところだけを見ると、部屋も冷えそうです。けれど、冷蔵庫の熱の出口も同じ部屋にあります。扉を開けたまま運転する場合を、図の中で考えてみましょう。
冷蔵庫はその部屋から熱を受け取り、同じ部屋へ熱を戻します。戻す分には、運転に使った電気のエネルギーも含まれます。したがって、部屋から取った熱と部屋へ戻した熱を差し引くと、電気入力分が残ります。
部屋全体に加わる正味のエネルギー=電気のエネルギー
これは、同じ部屋から吸熱し、放熱もすべてその部屋へ戻す、安定した運転での話です。壁や外気との熱のやり取り、最初から冷えていた食品などに蓄えられたエネルギーの変化は、この比較から除きます。冷たい空気が出る場所だけと、部屋全体の収支を区別するための考え方です。

この結論は、前の節のエネルギー収支から導いたものです。室温が何度上がるか、何分かかるかは、この式だけでは決まりません。実際に扉を開けっぱなしにする実験をしなくても、熱の入口と出口を同じ枠で囲むことで考えられます。
機種で違う、空気の巡り方と放熱の場所
冷蔵庫の中の空気をどう動かすかにも違いがあります。直冷式は自然な空気の巡りなどで冷やし、間冷式とも呼ばれるファン式は、冷却器で冷えた空気をファンで送ります。冷却器は、ここまでたどった蒸発器にあたります。

ここで比べる圧縮式の二つの例では、どちらも冷媒で中の熱を外へ運びます。ファンの有無は、中の空気の巡り方の違いです。一方、吸収式など別の冷却方式の冷蔵庫もあります。すべての冷蔵庫の中に、この記事と同じ四部品が並ぶと考えないでください。
放熱する場所も、背面・側面・前面など機種によって異なります。外側のどこが温かいかを図だけで決めつけず、必要な周囲のすき間は、お使いの機種の取扱説明書で確認してください。実物の圧縮機や配管には触らず、傷つけたり分解したりしないでください。燃えやすい冷媒を使う製品もあります。
よくある問い
冷蔵庫の側面が熱いのは、故障ですか?
側面に内蔵された管から放熱する機種や、露つきを防ぐ管がある製品では、その働きで外側が温かくなります。ただし、温かさだけで正常か故障かは決められません。自分の機種の説明書やメーカーの案内を確認してください。
冷媒は、冷蔵庫の中へ吹き出す冷たい空気ですか?
違います。冷媒は密閉された配管を巡る物質で、棚や食品の周りの空気とは別です。正常な運転では、空気と混ざらず、管の壁を通して熱を受け渡します。ファンが送るのは中の空気です。
圧縮機で冷媒が液体になるのですか?
このサイクルでは、圧縮機の出口でも冷媒は気体です。圧縮機で圧力と温度が上がり、その先の凝縮器で周囲へ熱を渡して液体になります。圧縮と凝縮は別の工程です。
冷蔵庫と壁の間は、何センチ空ければよいですか?
放熱の場所や必要なすき間は機種によって異なるため、一律の値は示せません。お使いの機種の取扱説明書の設置条件を確認してください。この記事の模式図は、実物の設置寸法を示すものではありません。
資料で、仕組みをもう一歩確かめる
全体の流れを読み直すなら、Danfossの基本解説とアピステの「冷凍サイクル」が入口になります。アピステは工業用の冷却装置の技術資料です。この記事では、家庭の冷蔵庫の温度や性能へ数字を当てはめず、四工程の原理を参照しています。
毛細管と蒸発器を詳しく見るDanfossの資料も、店舗などの冷却設備を扱います。使ったのは、流れを制限する管の役目と、液体が蒸発して気体へ変わる説明です。熱収支の根拠はOpenStaxの4.3節にあるエネルギー保存の関係です。扉を開けた場合の結論は、その関係を同じ部屋に当てはめたものです。
家の製品との違いは、メーカーの放熱・空気循環の案内から確認できます。下のNR-FZ121Aの説明書は家庭用冷凍庫の安全上の注意の具体例で、すべての冷蔵庫の構造や設置条件を示す資料ではありません。
図・模型:タメラボ制作。図中の字体:Noto Sans JP / Inter(SIL Open Font License)。参照資料の図版やロゴは転載していません。
ショート
出典
動画とこのページで使った事実・数字の出どころです。
- Danfoss(『How a refrigerator works』。冷媒の循環と主要部品の基本解説)danfoss.com/en/about-danfoss/our-businesses/cooling…
- アピステ(『冷凍サイクル』。(1)・(2)、①圧縮〜④蒸発。四工程と状態変化)apiste.co.jp/enc/technical/detail/id=4103
- Danfoss Design Center(『Hermetic Reciprocating Compressors』。電気モーターとピストン・シリンダーの構造原理。商用向け製品の資料)designcenter.danfoss.com/en-us/products/climate-solutions-for-co…
- Danfoss(『Choosing the right component: thermostatic expansion valve vs capillary tube in glass door merchandisers』(2015年)。“The alternatives”。毛細管による流れの制限)danfoss.com/en/service-and-support/case-stories/dcs…
- Danfoss(『Selecting the right evaporator injection algorithm makes a world of difference』(2018年)。“What happens in the evaporator?”。蒸発の進行と出口の気体)danfoss.com/en-gb/service-and-support/case-stories/…
- OpenStax(『University Physics Volume 2』(2016年)、4.3 “Refrigerators and Heat Pumps”。本文のエネルギー保存 W=Qh−Qc、図4.6・4.7)openstax.org/books/university-physics-volume-2/pages…
- Panasonic(『冷蔵庫の側面が熱い』。内蔵パイプと放熱する場所の説明)jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/9818
- ゼネラル(『冷蔵庫本体の側面が熱い』。側面・仕切り板の放熱/露つき防止パイプ)generalww.com/jp/support/faq/er/0005/index.html
- アイリスオーヤマ(『直冷式と間冷(ファン)式の動作の違いは何ですか?』。中の空気の巡り方)irisohyama.co.jp/support/faq/detail.php
- Dometic Group(『Dometic Adds New Models to its Popular 10 Series RV Fridge』(2020年)。“Compressor version”。吸収式と圧縮式の存在の確認)dometicgroup.com/en-us/press-media/news/emea/dometic-add…
- Panasonic(『冷蔵庫・冷凍庫の寸法・設置・搬入について【ご利用ガイド】』。「設置場所について」。周囲のすき間の確認)panasonic.jp/store/guide/price/reizo.html
- Panasonic(『NR-FZ121A取扱説明書』、紙面2〜3頁。冷媒・配管・分解に関する安全上の注意。家庭用冷凍庫の具体例)panasonic.jp/manualdl/p-db/p_/p_nr_fz121a_2012071111…
- 「ensolarado」Kyaai(OpenTracksopentracks.com
声・音・絵
- BGM:「なんでしょう?」KK/「ちょっと楽しい」天野 七祈/「ensolarado」Kyaai(OpenTracks: https://opentracks.com/)。
