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しくみの中身#05

GPSは、どうやって自分の場所がわかる?|しくみの中身 #05

答え

  1. GPSは届くまでの時間で距離を出し、4機で場所と時計のずれを解きます。
  2. 電波は約0.07秒で約2万kmを進み、時間×速さで距離が分かります。
  3. 分からないのは東西・南北・高さ・時計のずれの4つなので衛星は4機要ります。

ほかの言い方GPS 仕組み現在地がわかる理由衛星測位GPS 4機 理由

動画

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解説

図の衛星・スマホ・ビルは説明用の模型で、大きさは実際と違います。衛星の位置は2026年10月17日正午(日本時間)の軌道データから計算しました。機種や方式で違う所は「典型的には」と書きます。動きで見たい方は、同じ回の本編動画をご覧ください。

30秒で分かる全体の流れ

  1. GPS衛星は、送った時刻と自分の位置を電波で配り続けています。スマホは聞くだけで、衛星はスマホの場所を知りません。
  2. スマホは、雑音の中から衛星ごとの模様を聞き分けて、電波が届くまでの時間を測ります。
  3. 時間に電波の速さ(秒速約30万km)をかけると、衛星までの距離が分かります。届く時間は約0.07秒、距離は約2万kmです。
  4. 4機の衛星を使い、東西・南北・高さ・スマホの時計のずれという4つの分からないことを、いっしょに解きます。
地球をまわるGPS衛星。4色の線は東京の公園に届く4機の電波
地球をまわるGPS衛星。4色の線は東京の公園に届く4機の電波

GPS衛星:時報つきの灯台

GPSは米国が持つ仕組みで、宇宙と管制の部分は米国宇宙軍が開発・運用しています。民間向けのサービスは世界中で誰でも無料で使えます。衛星は高さ約2万200kmを回り、1日に2周します。6つの軌道面に分かれて並び、運用中の衛星は30機あまりです(2026年10月17日の軌道データでは32機)。

大事なのは、GPS衛星は地上の何も追跡していないことです。衛星は灯台のように一方通行の目印の信号を出しているだけで、あなたのスマホがどこにあるかは知りません。「スマホは衛星から位置を教えてもらう」と思われがちですが、実際は衛星の情報から、スマホ自身が計算で位置を求めます。

原子時計と「送った時刻」

衛星には原子時計があり、送った時刻は10億分の1秒の精度で刻まれます。この「送った時刻」が、後で距離を測る物差しになります。

衛星が知っている自分の場所

衛星は自分の軌道の情報も送ります。詳しい軌道の情報(エフェメリス)と、おおまかな情報(アルマナック。他の衛星の分も入っています)です。軌道は時刻の関数で表せるので、正確な時刻を入れると衛星の位置が分かります。この軌道の情報は、地上の管制局が衛星の位置を計算して、衛星に送っています。

衛星の断面。原子時計とアンテナ
衛星の断面。原子時計とアンテナ

衛星の時計と相対性理論

軌道上の衛星の時計は、主に重力の影響で、地上から見て少し速く進みます。その進みは1日に約38.6マイクロ秒(100万分の38.6秒)です。そこでGPS衛星の時計は、地上から見て正しく刻むよう、打ち上げ前に周波数をわずかに下げてあります。「直さないと1日に11kmずれる」という言い方を聞くことがありますが、これは単純化した言い方で、この記事では使いません。

スマホの中の道順

スマホの中では、電波が4つの関門を通ります。

①受ける

GPS衛星は30機あまりが基本的に同じ周波数(L1帯、1575.42MHz)で放送しています。約2万km先からの信号はとても弱く、自然の雑音に埋もれています。

②聞き分ける

衛星ごとに違う符号(1と0の模様)が使われています。受信機は、衛星の模様を届いた波の下で少しずつずらし、ぴったり合う所を探します。合った所で信号が浮かび上がり、着いた時刻が決まります。符号は毎秒102万3000ビットで、符号1つ分は約293mにあたります。受信機はさらに細かく読み、距離を数mの精度で測ります。複数の衛星を同時に受けて、別々に読むこともできます。

③読む

模様が合うと、毎秒50ビットのゆっくりしたメッセージが読めます。中には衛星の場所と、送った時刻が入っています。

④距離にする

距離は「電波が届くまでの時間 × 電波の速さ」です。2026年10月17日正午に東京の日比谷公園から見えた衛星のうち、この回で使う4機は次のとおりです(計算値)。

衛星距離届く時間
①水色(PRN13)20,585km0.069秒
②橙(PRN23)21,052km0.070秒
③黄緑(PRN32)22,673km0.076秒
④桃(PRN15)23,390km0.078秒

雷の例えで言えば、光ってから音までの秒数で距離が分かるのと同じです。雷の音は1秒に約340m進むので、3秒なら約1kmです。電波の場合は速さが秒速約30万kmなので、約0.07秒で約2万kmになります。

スマホのチップの中の4つの関門
スマホのチップの中の4つの関門

ここで覚えておきたいのは、表の「着いた」時刻は、4機ともスマホの1つの時計で測っていることです。これが次の謎解きの鍵になります。

距離から場所へ:球を重ねる

水色の衛星から約2万600kmという同じ長さの線をいろいろな向きに伸ばすと、線の先は球の面になります。距離が1つだけでは、この面のどこかにいることしか分かりません。橙の球を重ねると、重なる所は輪になります。黄緑の球を足すと輪を2か所で貫き、残るのは2つの点です。1つは東京の公園、もう1つは上空約3万3000kmの宇宙のかなたなので、地上の答えは公園に決まります。

球を重ねる段階。球の面、輪、2つの点
球を重ねる段階。球の面、輪、2つの点

4機目の衛星:時計のずれの謎解き

ここまでは、スマホの時計がぴったり合っている前提でした。電波は1億分の1秒で3m進みます。ですから時計のずれは、そのまま距離のずれになります。1000分の1秒のずれで約300km、100万分の1秒で約300m、1億分の1秒で3mです。

たとえばスマホの時計が1000分の1秒進んでいたとします。「着いた」時刻はどれも1つの時計で測るので、4つの距離がどれも同じだけ、約300km長くなります。3つの球がそろってふくらむと、3機で解いた答えは公園の東南東・横に約110km、深さ約370kmの地下に沈みます。4機目の桃色の球はその点を通らず、約250kmずれます。

そこで受信機は、時計のずれの見込みを少しずつ動かし、4つの距離を同じ分だけ縮めて、4機とも合う場所を探します。見込みが1000分の1秒に来た所で、地下の点は公園の地面に上がり、地図の上でも4本の線(球が地面と交わる所)が東京の1点で交わります。分からないことは東西・南北・高さ・時計のずれの4つなので、衛星は4機必要です。動画ではこの場面を、本編の時計の謎解きの場面で見られます。

1つの時計で4つの距離が同じだけずれ、直すと1点に集まる
1つの時計で4つの距離が同じだけずれ、直すと1点に集まる

こうして受信機は、場所といっしょに正確な時刻も手に入れます。GPS受信機は信号を読み解くことで衛星の原子時計に事実上そろい、時刻は1000万分の1秒以内で分かります。携帯電話の基地局どうしの時刻合わせにもGPSの時刻が使われています。ただし、スマホの画面の時計がGPSで合わせられている、という意味ではありません。

ビルの谷間と、青い点のまわりの円

地図アプリの青い点は現在地です。正確に特定できない時は水色の円が出て、現在地は円の範囲内にあります。円が小さいほど精度が高いしるしです。Androidでは、この半径の中に本当の場所がある見込みは68%と定義されています。

GPSが使えるスマホは、空が開けた所でふつう半径4.9m以内の精度です(GPS.gov。元は2015年の測定)。建物・橋・木の近くでは悪くなります。原因の1つが、ビルなどで反射した電波です。反射した電波は遠回りして遅れて届くので、その分「遠い」と測られます。

公園とビルの谷間(模型の計算)

同じ時刻・同じ衛星・同じ計算方法で、まわりの景色だけを変えた模型の計算です。地平線から10度より上の衛星だけを使います。ビルの谷間は、幅30mの東西向きの道の両側に高さ40mのビルが続く模型です。

空が開けた公園ビルの谷間(模型)
まっすぐ届く衛星9機3機
反射して届く衛星0機5機(遠回り約5〜17m)
計算した点の68%が入る円の半径約6m約10m
計算した点の平均のずれほぼ0m約4m

これは模型の一例で、実際の場所の精度の予測ではありません。図の円は「同じ場所で何度も計算した点の散らばり」で、地図アプリが表示する円とは別の図です。

公園とビルの谷間の比べ
公園とビルの谷間の比べ

みちびきと真上の衛星

みちびき(準天頂衛星システム、QZSS)は日本の衛星測位システムで、GPSと一体で使えます。準天頂軌道の衛星は日本のほぼ真上に長くとどまるので、ビルの谷間でもまっすぐ届きやすい衛星が増えます。模型で1日を見ると、ビルの谷間でまっすぐ届く衛星の真ん中の値は2機から4機に増えました。ただし反射した電波が混じると、衛星が増えても点の散らばりが必ず小さくなるとは限りません。この時刻の計算では、反射して届くみちびきの衛星も増え、円はかえって広がりました。

電離圏(電離層)での遅れ

電波が電離圏を通る時の遅れは、距離の誤差のいちばん大きな原因で、数十mの誤差になることもあります。2つの周波数を使うか、信号で送られる補正の式で減らします。

建物の中・地下では

衛星の電波は屋内では弱くなり、使えないか、位置のずれが大きくなることが多いです(窓ぎわなどでは届くこともあります)。地下街やトンネルでは、まず届きません。それでもスマホで場所が出るのは、携帯基地局・Wi-Fi・Bluetoothの情報も使って現在地を割り出しているためです。最近のスマホには、GPSのほか複数の測位衛星システムを使える物もあります。

よくある問い

スマホは衛星に電波を送っているの?

送っていません。GPS衛星は一方通行の信号を出す灯台のような存在で、地上の何も追跡しません。スマホが地図の表示などで通信網を使うこととは別の話です。

GPSを使うのにお金はかかる?

GPSの民間向けのサービスは、世界中で誰でも無料で使えます。

なぜ衛星は4機必要なの?

分からないことが東西・南北・高さ・時計のずれの4つあるからです。受信側の時計のずれはすべての距離に同じだけの誤差を足すので、4機目を使って場所と時計のずれをいっしょに解きます。

最初に場所が出るまで時間がかかることがあるのはなぜ?

衛星の軌道の情報はゆっくり送られるためです。GPSの航法メッセージは1ページ30秒、全部で25ページ12.5分かかります。スマホは同じ情報をインターネットや携帯電話回線から先に手に入れて、時間を短くできます。

建物の中でも場所が出るのはなぜ?

スマホの位置情報サービスは、GPSだけでなく携帯基地局・Wi-Fi・Bluetoothの情報からも現在地を割り出すためです。衛星の電波そのものは、屋内・地下街・トンネルでは一般的な受信機では使えません。

「みちびき」とGPSの関係は?

みちびきは日本の衛星測位システムです。GPSと一体で使え、GPSが増えたように使えます。日本のほぼ真上に長くとどまる衛星があるので、ビルの谷間でもまっすぐ届く電波が増えやすいのが特長です。

どのくらい正確?

空が開けた所のスマホで半径約5mが目安です。専用の受信機とみちびきの補強サービスでは、サブメートル級・センチメートル級の精度が得られる場合もあります。

衛星の時計は相対性理論で狂わないの?

衛星の時計は地上から見て1日に約38.6マイクロ秒進みます。その分を見込んで、打ち上げ前に時計の進みをわずかに遅く合わせてあります。

資料への道案内

出典

動画とこのページで使った事実・数字の出どころです。

参考にした文献

  1. 地球の画像:NASA Earth Observatory(Blue Marble Next Generation)。地図:地理院タイル(国土地理院)。

リンク

  1. GPS.gov(保存版)「GPS: The Global Positioning System」「Space Segment」「Control Segment」「GPS Accuracy」「Timing」、米国政府。 ほかarchive.gps.gov/systems/gps
  2. GPS.gov FAQ「I lost my mobile phone/device. Can GPS help me find it?」、米国政府。gps.gov/faq
  3. 内閣府 みちびき「宝探しで理解する衛星測位(1)〜(4)」(2015年、監修 久保信明)。 ほかqzss.go.jp/overview/column/intro01_150918.html
  4. 内閣府 みちびき「アルマナックとエフェメリスは、測位衛星の時刻表」(2017年)。qzss.go.jp/overview/column/diagram_170613.html
  5. 内閣府 みちびき「CDMA[前編][後編]」(2017年)。 ほかqzss.go.jp/overview/column/cdma_170109.html
  6. 内閣府 みちびき「マルチパス」(2016年)、「電離圏を電波で測る」(2016年)、「衛星測位サービス」「みちびきとは何か」「みちびきの軌道」「FAQ」。qzss.go.jp
  7. Google マップ ヘルプ「現在地の検出精度を高める」。support.google.com/maps/answer/2839911
  8. Android Developers「Location.getAccuracy()」。developer.android.com/reference/android/location/Location
  9. Apple サポート「iOS/iPadOS/watchOSのプライバシーと位置情報サービスについて」(2026年)。support.apple.com/ja-jp/102515
  10. Apple「iPhone 17 - 技術仕様」。apple.com/jp/iphone-17/specs
  11. ESA Navipedia「GPS Navigation Message」。gssc.esa.int/navipedia/index.php/GPS_Navigation_Mess…
  12. Neil Ashby「Relativity in the Global Positioning System」、Living Reviews in Relativity 6, 1 (2003)。pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5253894
  13. 気象庁 子ども向けFAQ「雷が光ってから、音が聞こえるまでに差があるのはどうして?」。jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a3_16.html
  14. BIPM「SI defining constants」(光の速さ 299,792,458 m/s)。bipm.org/en/measurement-units/si-defining-consta…
  15. CelesTrak GP data「gps-ops」(衛星の軌道データ、2026年10月17日の要素)。celestrak.org/NORAD/elements/gp.php
  16. qzss.go.jp/overview/column/multipath_160704.html

声・音・絵

  • Music (OpenTracks): “なんでしょう?” by KK/“ちょっと楽しい” by 天野 七祈/“探偵推理中” by 田中芳典/“ensolarado” by Kyaai

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