Suicaをピッとした一瞬に、何が起きている? |しくみの中身 #04
答え
- Suicaのタッチでは、電力・相手の確認・記録更新という3つの働きが進みます。
- 秘密の鍵を送らず、その場の問いへの返事と、操作の権限を確かめます。
- 対応iPhoneの一部カード等は、電池に残る予備電力で最大5時間使える場合があります。
ほかの言い方Suicaの仕組み交通系ICカード相互認証スマホの予備電力
動画
再生を押すと、YouTube の動画をこのページの中で読み込みます。 YouTube で見る
解説
動画の流れ
Suicaをタッチして聞く、いつもの短い音。その前に、カードと読み取り部は何をしているのでしょう。カードを開く立体の模型で、電力・相手の確認・保護された記録への書き込みを追います。後半では、スマホの画面が止まっていてもタッチできる場合の電力も見ます。
電池のないカードは、どこから電力を得る?
カードの中には、輪状のアンテナとICチップがあります。カード型Suicaには電池がありません。読み取り部が作る磁界の変化をアンテナが受け、電力を取り出します。この働きが電磁誘導です。カードをこすったり、強く押したりして発電するのではありません。
黄色の輪は、見えない磁界の変化を示す説明表示です。実際の磁力線を描いたものではありません。非接触は、電気的な接点を直接つながなくてよい、という意味です。図の厚さと隙間は、中を見せるために広げています。

図1。説明用の模型です。
参照:R1
秘密の鍵を見せずに、相手を確かめる
電力を得たカードは、読み取り部と情報をやり取りします。Suicaに使われるFeliCaには相互認証の仕組みがあります。保護された情報を扱うやり取りで、カードと読み取り側の双方を確かめます。
ここでいう鍵は、暗号の計算に使う秘密のデータです。鍵そのものを相手へ送って見せるのではありません。図の紫色の欄は、そのデータを説明する拡大表示です。鍵という名前の物体がチップの中に入っている、という意味ではありません。
相手が必要な鍵を持っているかを、暗号の計算結果で確かめます。券面の見た目や見える番号だけで、保護されたやり取りを許可する図にはしていません。

図2。説明用の模型です。
古い返事の使い回しが、なぜ止まる?
暗号認証の考え方を、問いと返事の模型にします。読み取り側が新しい問いを送り、カードは鍵を使って、その問いへの返事を計算します。読み取り側も、対応する鍵を使い、今回の問いに合う返事かを確かめます。反対方向にも確認することで、カードも読み取り側を確かめられます。
問いは、その都度変えます。前回の返事を録って使い回しても、今回の問いに合う返事にはなりません。図の右側では、古い返事を受け付けません。これは秘密の鍵が安全に保管され、適切な暗号と新しい問いを使う場合の仕組みを示します。
問いや返事の具体的な値、暗号の計算式、通信の回数や順番は再現していません。Suicaの内部の通信手順を公開資料だけから再現したものではなく、認証の考え方を追う説明用の模型です。

図3。説明用の模型です。
参照:R3
相手の確認と、書き込みの許可は別の関門
相手を確かめても、すべての項目を書き換えてよいわけではありません。保護された記録には、どの鍵で、どんな操作をしてよいかという権限を設定できます。
図では、利用の記録という一つの項目を、同じ初期状態から別々に比べています。許可された書き込みは、確認を通った後に同じチップへ届き、記録が更新されます。カードの返事が戻ると処理の完了です。必要な権限のない操作は、電力が届いていても許可せず、保護された利用の記録を更新しません。
通信の内容を隠す暗号化と、内容が途中で変えられていないかの確認は、役目が違います。暗号を使う確認用のデータを確かめることで、通信途中の改変を検出できます。相手の確認、操作の権限、通信内容の確認を重ねるのが、この図で見せる守り方です。

図4。説明用の模型です。
スマホの画面が止まっても、なぜタッチできる?
スマホにも、近距離通信を扱う回路と、カードの情報を保護する部品があります。対応するiPhoneでは、充電が必要で通常の動作が止まった後も、電池に残る電力で、一部のエクスプレスカードを使える場合があります。
Appleは、対象のカード・パス・鍵の一部について、予備電力で最大5時間使えると案内しています。対象の機種と対応するカードなどの設定が必要で、すべてのタッチ決済が使えるという意味ではありません。利用者が自分で電源を切った場合には、この機能は使えません。
JR東日本も、予備電力機能を持つ一部のAndroid端末で、充電が必要になった後の一定時間、Suicaを使える場合があると説明しています。こちらも、自分で端末の電源を切った場合は対象外です。
電池が完全に空でも動く、という話ではありません。電池のないカードが読み取り部から電力を得ることと、スマホが残っている予備電力を使うことを、分けて見ると分かりやすくなります。

図5。説明用の模型です。
この図で省いたこと
保護された記録の「利用の記録」は説明用の項目名です。暗号の値や通信手順を実機のとおりに再現する図ではありません。スマホの図も、特定の製品の部品の形や位置を再現したものではありません。
クレジット
BGM (OpenTracks):KK「なんでしょう?」、天野 七祈「ちょっと楽しい」、Kyaai「ensolarado」。語り:Irodori-TTS(日本語)/Kokoro(英語)。模型・図・効果音:タメラボ制作。字体:Noto Sans JP、Inter、MPLUSRounded1c ExtraBold(SIL Open Font License 1.1)。Suicaは東日本旅客鉄道株式会社の登録商標です。FeliCaはソニーグループ株式会社またはその関連会社の登録商標または商標です。
ショート
出典
動画とこのページで使った事実・数字の出どころです。
- ソニー「FeliCaってなに?」・カードの構造(— アンテナ・ICチップ・読み書き。電磁誘導はソニーの手づくり実験も照合)sony.co.jp/en/Products/felica/about
- ソニー「FeliCaのしくみ」(— 相互認証、アクセス権、通信の暗号化)sony.co.jp/Products/felica/about/scheme.html
- ソニー「FeliCa Lite-S Security Application Note」(— 5.2〜5.5節。問いと返事、秘密の鍵、アクセス制御、MACと完全性の考え方。Suicaの実装手順を示す資料ではない)sony.net/Products/felica/business/tech-support/d…
- NXP「MIFARE DESFire EV3」(— 相互認証、ファイルごとのアクセス権、CMAC、無線区間の暗号化)nxp.com/products/MF3DHx3
- Apple「予備電力機能付きエクスプレスカード」(— 通常動作が止まっても電池に電力が残ること、NFCコントローラの動作、自分で電源を切った場合の対象外)support.apple.com/guide/security/express-cards-with-power…
- Apple「エクスプレスモードを使う」(— 一部の対応カード等で最大5時間)support.apple.com/en-us/105123
- JR東日本「Android端末の電源が切れていてもSuicaは使えますか?」(— 予備電力対応端末で一定時間Suicaのみ利用できる場合。自分で電源を切った場合は対象外)msfaq.mobilesuica.com/faq/show/3268
- ソニー・非接触ICカード手づくり実験sony.com/ja/SonyInfo/csr/ForTheNextGeneration/cu…
- 予備電力機能付きエクスプレスカードsupport.apple.com/ja-jp/guide/security/sec90cd29d1f/web
声・音・絵
- BGM (OpenTracks):KK「なんでしょう?」、天野 七祈「ちょっと楽しい」、Kyaai「ensolarado」。
- 字体:Noto Sans JP、Inter、MPLUSRounded1c ExtraBold(SIL Open Font License 1.1)。
