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もしもを計算してみた#04

勉強ゼロ、サイコロだけで試験を受けたら、合格者は出る? 1万人で計算してみた|もしもを計算してみた #04

答え

  1. サイコロだけの1万人でも、合格者は10人出ました。
  2. 合格できるのは約1,100人に1人(1万人あたり平均9.4人)で、1,000回くり返しても合格者が0人の回はありませんでした。
  3. ただし100問に増やすと、全人類(約83億人)が受けても合格者は0人でした。

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解説

4択20問の試験では、勉強ゼロでも1万人のうち10人が合格しました。

12問正解で合格、減点なしという条件で、3回計算した真ん中の値です。

式で求めた合格率は約1,100人に1人で、1万人あたり平均9.4人です。

30秒で分かる結果

答えをサイコロに任せても、短い試験なら、まぐれで合格する人は出ます。ただし、受験者の知識と試験のルールで、結果は大きく変わりました。

  • 毎問、間違いの選択肢を1つ消せると、合格者は141人。サイコロだけの約14倍です。
  • 4問に1問の答えが本当に分かると、575人が合格。何も分からない時の50倍以上です。
  • 間違い3つで正解1つ分を引くと、サイコロだけの合格は、式で約3万4,000人に1人まで減ります。
  • 問題を100問にすると、今回のシミュレーションでは、全人類にあたる約83億人が受けても合格者は0人でした。

最後の結果も「絶対に受からない」という意味ではありません。何が起きたかを、条件と式から順に見ていきます。

どんな試験を計算したか

まずは、次の架空の試験を考えます。

条件設定
問題4択・20問。各問の正解は1つ
合格ライン12問以上正解。1問5点、100点満点で60点以上
間違えた時減点なし
受験者1万人。全員が全部の問題に答える
答えの選び方公正な6面のサイコロを使う

「公正」は、どの目も同じ確率で出るという意味です。1〜4をア〜エに対応させ、5か6が出たら、答えが決まるまで振り直します。こうすると、どの選択肢も同じ確率で選ばれ、1問に当たる確率は1/4です。振り直しは誤答に数えません。

各人の各問の選択は、ほかの人や前の問題の結果に左右されないものとします。問題・正解・受験者・会場は架空です。ここで計算するのは、実在する試験の難しさではなく、このルールでの運の働きです。

20問で12問以上当てる確率

「ちょうど当たる」を足して「合格する」にする

同じ確率で当たる試行を、互いに影響しない形でくり返した時、当たりの数の出方を表すのが二項分布です。問題数を n、1問に当たる確率を p、正解数を X とすると、ちょうど k 問当たる確率は次の式です。

P(X = k) = C(n, k) × p^k × (1 − p)^(n − k)

P は「確率」、C(n, k) は「n問から、当たるk問を選ぶ組み合わせの数」です。p^k は当たりがk回、(1 − p)^(n − k) ははずれが残りの回数だけ続く確率。組み合わせの数を掛けることで、当たりとはずれの並び方を全部数えます。

今回なら n=20、p=1/4。合格は12問ちょうどだけでなく、13問、14問と当たった場合も含みます。

合格確率 q = Σ[k=12…20] C(20, k) × (1/4)^k × (3/4)^(20 − k)

Σは、指定した範囲の値を全部足す記号です。この計算の結果が約0.0935%、約1,100人に1人でした。1万人での合格者の平均は、人数にこの確率を掛けます。

平均合格者数 = 10,000 × q ≈ 9.4人

平均9.4人と、今回の10人はどう違う?

9.4人は、同じ条件で何度も試した時の平均です。実際の1回には、人の端数は出ません。

タメラボの自作プログラムで、1人ずつ、1問ずつ、振り直しも含めてサイコロを振りました。乱数の種、つまり同じ結果を再現するための設定を変えて3回計算すると、合格者は14人・10人・5人。動画で見せたのは、その真ん中の10人です。3回の平均を10人としたわけではありません。

その回では、最後の問題の直前に、まだ合格できる人が25人いました。すでに合格が決まった7人と、あと1問当てればよい18人です。最後に18人のうち3人が当て、合計10人になりました。

受験番号3777番も、その最後の問題で12問目の正解を得た人です。12問正解・8問不正解で、ちょうど60点。平均から遠く離れた答案でも、大勢が受ければ、現れることがあるのです。

1つ消す、5問知ると、合格はどれだけ増える?

試験は同じまま、答えの選び方だけを変えます。

答え方合格者数:1万人で3回計算した真ん中式で求める平均合格者数:1万人あたり
全問を4択からサイコロで選ぶ10人約9.4人
全問で誤答を1つ消し、残り3択から選ぶ141人約129.7人
5問は必ず正解、残り15問は4択から選ぶ575人約566.2人

1つ消す作戦は、先ほどの式の p を1/4から1/3に変えれば計算できます。「1つだけ」の違いでも、それが全問に効き、12問以上当たる確率は大きく上がります。

答えが分かる問題を K 問とする作戦では、その K 問を先に確保します。残りの20−K問のうち、12−K問以上を当てる確率を、同じ二項分布で計算します。「分かる」問題は必ず正解し、残りはすべてサイコロです。

約14倍、50倍以上という増え方は、表の作戦で比べた結果です。「少しでも知識があれば、いつでも10倍以上」という意味には広げられません。

ギリギリで受かるには、何問分かればよい?

全部を2択にできれば、もう十分でしょうか。1問に当たる確率は1/2になりますが、12問以上当てる確率は25.2%、約4人に1人です。半分当たりそうなことと、6割に届くことには差があります。

では、何問かの答えを確実に知っていたらどうなるか。次の表は、4択20問・12問正解で合格・減点なし・全問に答える条件で、式から求めた合格確率です。

必ず正解する問題数残りは4択残りは3択残りは2択
0問0.09%1.3%25.2%
3問1.2%7.5%50.0%
5問5.7%20.3%69.6%
8問35.1%60.7%92.7%
9問54.5%76.6%96.7%
11問92.5%97.4%99.8%
12問100%100%100%

表は表示用に丸めています。残りが4択のままでも、9問分かれば合格確率は54.5%。確保した9問に、残り11問のサイコロで3問以上を足せる確率です。11問を確保すれば92.5%になります。

動画では「消せる間違いの選択肢の数」でも比べました。全部を2択にするなら、20問で2つずつ、計40個を消します。一方、9問の答えを知ることを「その9問の誤答を3つずつ消せる」と数えると、計27個。こちらの方が少ない数で、合格確率は高くなります。

これは仮の物差しです。選択肢を1つ見抜く手間と、正解を確実に知る手間が同じだとは限りません。27個と40個の比較から、実際の勉強時間まで決めることはできません。

間違えると減点なら、どうなる?

間違い3つで正解1つ分を引く

次は、正解1つ分の点を1とし、誤答1つにつき1/3を引きます。合格ラインは12問分のまま。全員が20問全部に答えるので、正解数を c とすると、

得点(正解何問分か)= c − (20 − c)/3

この得点が12以上なら合格です。14問正解・6問不正解なら、14 − 6/3 = 12。合格に必要な正解数は、12問から14問へ増えました。3777番の答案も、このルールで採点し直すと46.7点で不合格です。

4択をサイコロで選ぶ時、1問あたりの平均得点は、

(1/4) × 1 − (3/4) × (1/3) = 0

となります。平均が0点でも、すべての人が0点になるわけではありません。二項分布の式で14問以上当たる確率を足すと、合格は約3万4,000人に1人。減点なしの約30分の1です。

1万人の答案を採点し直した3回の結果は、1人・3人・0人でした。式の平均は1万人あたり約0.3人です。少人数しか受からない条件ほど、1回の人数と、くり返した時の平均を分けて読む必要があります。

1つ消せる人には、まだ得点の積み上げがある

誤答を1つ消せるなら、正解確率は1/3です。同じ減点でも、1問あたりの平均は、

(1/3) × 1 − (2/3) × (1/3) = 1/9

と、0より大きくなります。シミュレーションでも、減点ありで1万人中9人が合格しました。式の平均は約8.8人です。減点が0にするのは、何も分からない4択の平均点であり、知識で絞った人の平均点までではありません。

採点の歴史には、似た考え方の例があります。旧SATでは2016年1月の試験まで、選択式の誤答に1/4点の減点がありました。数学の答えを書きこむ問題には誤答の減点がなく、2016年3月の新しいSATでは推測への減点がなくなっています。今回の1/3という設定とは、減点の大きさを区別してください。

100問にすると、全人類でも合格者は出ない?

今度は減点をなくし、全問サイコロのまま、100問・60問正解で合格にします。同じ1万人の最初の20問の答案を引き継いで続きを計算すると、動画で見せた回では、74問目に最後の人も合格に届かなくなりました。3回とも、合格者は0人です。

問題数を n として、合格に必要な正解数から n まで二項分布の確率を足せば、問題数が違う試験も比べられます。次は、どれも4択・6割以上正解で合格・減点なしの場合です。

問題数式で求めた、サイコロだけで合格する確率
5問約10人に1人
10問約51人に1人
20問約1,100人に1人
30問約2万人に1人
50問約610万人に1人
100問約7兆5,000億人に1人

当てずっぽうの平均は、100点満点に直すと、どちらの試験も25点です。問題が多いほど、正解の割合は1/4の近くに集まり、60点まで大きく上振れすることが起きにくくなります。

「1人の合格確率」と「誰かが合格する確率」

全人類の人数には、国連の2026年の中位推計、8,300,678,396人を使いました。これは実際に数えた人口ではなく、World Population Prospects 2024に基づく推計です。

1人の合格確率を q、受験者数を N とすると、全員が不合格になる確率は (1 − q)^N。したがって、

1人以上が合格する確率 = 1 − (1 − q)^N

です。100問の q と上の人口を入れると、約0.11%、約900回に1回になります。計算には、途中で丸める前の確率を使います。

今回の全人類のシミュレーションは3回とも合格0人でした。動画の回では、92問目で最後の1人が残り、正解52問・間違い40回。残り8問を全部当てれば合格でしたが、93問目ではずれ、合格の可能性がなくなりました。大人数の部分は、人数をまとめて二項分布で計算しています。

20問の試験なら、同じ人口で約776万人が合格する結果でした。人数を増やす効果と、問題を増やす効果は、これほど違います。ただし100問でも、式の上では合格確率は残っています。

この計算と現実の試験が違う所

このモデルでは、分からない問題の当たりやすさは一定で、各問の選択は互いに影響しません。「分かる問題」は必ず正解し、「消せる選択肢」は必ず誤答です。思い違いや、消し間違いは扱っていません。

勉強にかかる時間も計算していません。9問で54.5%という結果は、この架空の試験での条件つきの確率です。実在の試験で「9問だけ勉強すればよい」とする目安には使えません。

よくある問い

1万人いれば、必ず誰かが受かりますか?

必ずではありません。20問の条件で1万人全員が不合格になるのは、式で約1万2,000回に1回です。別に1万人の試験を1,000回くり返して確かめた時は、毎回2〜19人が合格し、0人の回はありませんでした。それでも、0人の確率がなくなったわけではありません。

サイコロで5や6が出たら、間違いですか?

いいえ。4択では振り直すルールなので、5と6は答えに数えません。選んだア〜エを、架空の正解と比べて採点します。サイコロの6面を、そのまま4つの選択肢に割り当てているわけではありません。

9問分かれば、残りはサイコロでも必ず合格できますか?

いいえ。減点なしで、残りが4択なら合格確率は54.5%です。「半分以上が受かる」は保証ではありません。11問が確実でも92.5%で、12問を確保すると100%になります。

減点があっても、分からない問題は全部答える方がよいですか?

平均点での得と、合格しやすさは区別が必要です。今回の減点1/3で12問の正解が確実なら、残りを空欄にすると60点で必ず合格します。一方、残りを4択のサイコロで全部答えると、合格確率は63.3%です。今回の実験と作戦表は、全員が全部答える条件で比べています。

Webで条件を変えて試す

この回の「サイコロ受験シミュレーター」では、自分で20問を受け、動画と同じ1万人の中で何番目の運だったかを見られます。そのあと「ルールを変える」や「ギリギリ作戦表」へ進めます。

まずは同じ条件で「別の受験者で」を試し、人数のぶれを見てください。次に合格点や減点を変えると、「何問分かれば半分が受かるか」も変わります。最後に受験者を全人類にして、どこまで問題を増やせるかを探してみてください。

合格に必要な正解数は、整数に切り上げます。そのため、問題数を少し増やした時に、かえって受かりやすくなる場合もあります。人数の結果と一緒に、表示される「合格に要る正解」の数も見ると、式とのつながりが分かります。

ショート

出典

動画とこのページで使った事実・数字の出どころです。

  1. Our World in Data/国連 World Population Prospects 2024(2024年版に基づく2026年の世界人口の中位推計、8,300,678,396人。使用データは population-with-un-projections.csv の World, OWID_WRL, 2026、Population (Projected) 列。CC BY 4.0。企画書に記録されたデータ確認日:2026年10月13日。元ファイルの取得日は材料に記載なし)ourworldindata.org/grapher/population-with-un-projections
  2. NIST/SEMATECH e-Handbook「Binomial Distribution」(企画書に記載された二項分布の標準式の参照先。記事作成時の確認日:2026年10月17日。公正なサイコロ、正解確率、合格点、今回の減点係数は本回の仮定です。少なくとも1人が合格する確率は、本文で全員不合格の確率から導いています。数値計算はタメラボの自作プログラムによります。企画段階と制作段階の計算結果の一致は、制作報告と素材記録に記載されています)itl.nist.gov/div898/handbook/eda/section3/eda366i.htm
  3. College Board「How the SAT Is Scored」(2013年5月29日のInternet Archive保存版。旧SATの選択式の誤答は−1/4点、数学の答えを書きこむ問題の誤答と空欄は減点なし。企画書の資料確認日:2026年10月13日)web.archive.org/web/20130529191949/http://sat.collegebo…
  4. College Board「SAT Suite of Assessments Technical Manual」(2017年12月版。旧SATは2016年1月まで、新しいSATは2016年3月からで、推測への減点を廃止したことの根拠。企画書の資料確認日:2026年10月13日)satsuite.collegeboard.org/media/pdf/sat-suite-assessments-technic…

声・音・絵

  • 声:Irodori-TTS(合成音声)/BGM:yuki「楽しく軽快に」、鷹尾まさき「考え中」「突破口の手がかり的なBGM」、MATSU「Shall we meet?」(OpenTracks)/効果音:Kenney「Casino Audio」(CC0)、Anthousai「writing - pencil - wide 04」(Freesound、CC0)

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