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もしもを計算してみた#02

もし直径10kmの隕石が地球に衝突したら?止める方法まで計算した|もしもを計算してみた #02

答え

  1. 小惑星を押してよけるのに必要な速さは、早く押すほど小さくて済みます。
  2. 「DART何機分」は、DARTと同じ重さ・速さの体当たりで渡せる勢いとして計算しています。
  3. 落ちた時の穴や積もる厚さは研究の式による見積もりで、空気の働き・揺れ・熱・津波などは計算していません。

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解説

直径10kmの小惑星が、地球にぶつかるコースに乗っていたら?

落ちた時の穴と、飛び出す岩、地球と月の動きの変化を計算し、10年前・1年前に押してよける方法と、1日前に砕く方法も、本物の惑星の動きの中で試しました。

30秒で分かる結果

試したことこの条件での答え
そのまま衝突する穴の直径は約115km。1,000km先に約8分で岩が届き、少なくとも約17cm積もる
10年前に押す小惑星の速さに秒速約8.5mmを足せばよける。ただし、DARTと同じ体当たりなら約190万機分
1年前に押す足す速さは秒速約5.8cm。DART約1,300万機分
1日前に砕く人類最大の爆発と同じエネルギーでは、3回とも1,000個すべての破片が地球に落ちる

地球の太陽を回る道すじはほとんど変わりません。それでも、地上の被害が小さいという意味にはなりません。この回で計算したのは穴、降ってくる岩、宇宙での動きです。揺れ・熱・気候・人への被害は計算していません。

前提:どんな小惑星を、どこへ落とすか

題名では「隕石」と呼んでいますが、宇宙を動いている間は「小惑星」、地上に落ちた物が「隕石」です。ここからは小惑星と呼びます。

条件計算に使った値・設定
小惑星の直径 d10km=10,000m。形は球
小惑星の密度 ρ3,000kg/m³。岩を想定
衝突する速さ v地面に着く時に20km/s=20,000m/s
衝突する角度 θ地面から45度
地面の密度 ρₜ2,750kg/m³。一様な結晶質の岩
地球の半径 R・地表の重力 g6,371km・9.81m/s²
地球の質量 M5.9722×10²⁴kg
衝突地点サハラ砂漠の北緯23.0度・東経0.5度。北へ向かって衝突

密度は、同じ体積にどれだけ重さが詰まっているかを表す値です。サハラ砂漠は「陸の岩に落とす」ために選んだ場所で、衝突の予報ではありません。

天体の動きの出発点には、NASA JPLの天体暦、つまり天体の位置と速さの記録を使いました。惑星の並びは2000年1月1日12時(TDBという天体計算用の時刻)のものです。公開日の空に実在する小惑星を見つけたのではなく、その並びの中に架空の衝突コースを作った実験です。

衝突したら:穴と降ってくる岩を計算する

まず、重さとエネルギーを出す

球の体積に密度を掛けると、質量 m が出ます。式では長さをm、速さをm/sにそろえます。「³」は三乗、「^0.78」は0.78乗という意味です。

m=(π/6) × ρ × d³

m=(π/6) × 3,000 × 10,000³ ≈ 1.5708×10¹⁵kg

次に、動いている物が持つ運動エネルギー E を計算します。J(ジュール)はエネルギーの単位です。

E=m × v² / 2

E=1.5708×10¹⁵ × 20,000² / 2 ≈ 3.1416×10²³J

速さは二乗で効きます。同じ岩でも、直径だけで衝突の規模が決まるわけではありません。

直径10kmの岩から、約115kmの穴へ

穴の大きさには、Collins・Melosh・Marcusの研究で使われた式を使います。最初に掘り広げられる穴の直径を Dₜ、その後に崩れてできる最終的な穴の直径を D とします。

Dₜ=1.161 × (ρ/ρₜ)^(1/3) × d^0.78 × v^0.44 × g^(−0.22) × (sin θ)^(1/3)

前提の値を入れると、崩れる前の穴は66.30kmです。さらに、大きな穴が崩れる分を次の式で見積もります。ここでも長さはすべてmで、D_c=3,200mを使います。

D=1.17 × Dₜ^1.13 / D_c^0.13

D_cは、穴の形が変わる境目を表す定数です。結果は115.04km、約115km。時速100kmで端から端まで走っても、1時間9分かかる幅です。この数は研究の式による見積もりで、地形を細かく再現した穴の設計図ではありません。

1,000km先に積もる「少なくとも約17cm」

衝突で穴から飛び出す岩を「放出物」といいます。積もる厚さ t は、崩れる前の穴 Dₜ と、衝突地点からの距離 r で求めます。距離は地表に沿って測り、式に入れる時はmにします。

t=Dₜ⁴ / (112 × r³)

1,000km先なら、r=1,000,000m。Dₜを入れると厚さは0.1726m、約17cmです。地面を巻き込む分や、岩の間のすき間でかさが増す分を含まない下限の見積もりなので、「少なくとも」を付けています。

到着時間は別に計算します。岩が地面から45度で飛び出すとし、各距離に届く速さを求め、丸い地球の重力で曲がる道すじをたどりました。衝突角度の45度とは別の仮定です。

衝突地点からの距離岩が届くまで積もる厚さの下限
500km5分34秒約1.4m
1,000km8分14秒約17cm
2,000km12分44秒約2.2cm

この式では、穴の外で1,000kmより近い場所には、さらに厚く積もります。穴を除いたその範囲は約312.5万km²、日本の約8倍の広さです。「17cm」は遠くでの厚さであり、全域が一様に17cmになるという意味ではありません。

宇宙から見ると、地球の道すじはほとんど変わらない

地上の巨大な穴と、地球全体の動きは、別のものさしで考える必要があります。

地球と小惑星の質量の比=5.9722×10²⁴ / 1.5708×10¹⁵ ≈ 38億倍

衝突後は地球と小惑星が一つになり、両者の運動量、つまり「質量×速度」で表す勢いを足し合わせるとして、地球の速度を変えます。その後の道すじを、衝突しなかった場合と比べました。

衝突の向きによって結果は変わります。一年の長さが最も変わる向きでも、変化は約0.014秒、約70分の1秒。今回のサハラへ落ちる向きでは、約0.00020秒短くなる計算でした。

月について求めたのは、地球を回る道すじを楕円として、その長い方の半径の変化です。最も変わる向きで約3mでした。月までの距離が、その瞬間に一律3m増えるという意味ではありません。また、一年の長さが最も変わる衝突の向きと、月が最も変わる向きは別です。

止めるなら:10年前に速さを少し変える

「よけた」の基準と、答えの探し方

この実験では、小惑星のいちばん下が地表から100kmより上を通れば「よけた」とします。直径10kmの岩なので、高さは中心ではなく下の端で測ります。

岩の下の端の高さ=地球中心から岩の中心までの距離 − 6,371km − 5km

太陽・8惑星・月を、互いに引き合う重力で動かします。小惑星はそれらの天体に引かれるとして、衝突の瞬間から時間を戻して道すじを作りました。

押す時には、太陽を回る進行方向か、その逆方向に一度だけ速度を変えます。この変化量を Δv(デルタ・ブイ)と書きます。押した後を計算し直し、「よける/ぶつかる」の境目を半分ずつ絞って、より小さなΔvで済む向きを選びました。

秒速8.5mmは「足す量」

10年前なら、進む向きに秒速8.519mm、約8.5mmを足すのが答えでした。小惑星そのものが秒速8.5mmで飛ぶわけではありません。この時の太陽を回る速さは秒速25.94kmです。地面にぶつかる速さの秒速20kmとも、基準が違います。

秒速8.519mmの違いは、1時間なら約31mずれる量です。ただし、10年間のずれを単純な「速さ×時間」で求めたのではありません。押すと太陽を回る道すじが変わり、一周の時間も変わります。

この場合は速くしたことで道すじの輪が少し大きくなり、到着が約7分半遅れました。その間に地球が先へ進み、岩は下の端が約100kmの高さで通り過ぎます。衝突予定の1日前には、押した岩と押さなかった岩の同じ時刻の位置に約6,000kmの差ができていました。

小さな速度差でも、DARTなら約190万機分

DARTは、NASAが2022年に小惑星ディモルフォスへ体当たりさせた探査機です。2026年の研究では、ディディモスとディモルフォスのペアが太陽を一周する時間が約0.15秒短くなったと測られました。ペアの小さい方が大きい方を回る時間とは区別します。

この回では、DARTの衝突時の質量579.4kg、速さ6,144.9m/sを使います。飛び出す岩の反作用も含め、探査機だけの勢いの何倍が渡るかを β(ベータ)とし、β=2.0と置きました。

DART 1機分の勢い p=β × 579.4 × 6,144.9 ≈ 7.1×10⁶kg·m/s

必要な機数 N=m × Δv / p

Δvをm/sにそろえて代入すると、10年前は1.879×10⁶機、約190万機分です。小惑星はDARTの約2.7兆倍も重いため、わずかな速度差にも巨大な勢いが要ります。

押す時期必要な速度の変化DARTと同じ体当たりに換算
10年前秒速約8.5mm約190万機分
1年前秒速約5.8cm約1,300万機分

1年前では、必要な速度の変化も機数も約7倍になります。この機数は勢いの比較です。同じβが直径10kmの岩でも成り立つとは限りません。βを1.7〜2.3とした場合、10年前の値は約160万〜220万機分になります。

7年前のほうが、10年前より小さく済む例外

今回の道すじでは、7年前の答えは秒速約6.05mmで、10年前より小さくなりました。その時は小惑星が太陽の近くを速く通っており、同じ速度の変化でも道すじを大きく変えやすいためです。

したがって、結論は「おおむね早く見つけるほど小さな押しで済む」。残り時間だけでなく、押す場所も効きます。これは今回選んだ道すじでの比較で、すべての小惑星に共通する押し時ではありません。

直前に砕いたら、破片は散らばりきるか

衝突の1日前に、岩を1,000個の同じ大きさの破片へ分けます。1個の直径は約1km。全部が同じ速さで、ばらばらの向きに飛ぶとしました。

人類最大の爆発のものさしは、50メガトンのツァーリ・ボンバです。TNT 1メガトン=4.184×10¹⁵Jとして、約2.09×10¹⁷Jになります。

このエネルギー Eₛ が全部、破片を散らす運動に変わるとします。元の小惑星に対して破片が飛び出す速さを u とすると、質量の合計は m のままなので、

Eₛ=m × u² / 2、したがって u=√(2Eₛ/m)

速さは秒速16.3mです。破片の向きを変えて3回計算したところ、3回とも1,000個すべてが地球に落ちました。砕いても、散らばる時間が足りないのです。

次に、外れる破片が99%以上になるエネルギーを探しました。以下は3回の計算の真ん中の値です。

砕く時期必要な散らす速さ必要なエネルギー50メガトンとの比較
1日前秒速約560m約2.44×10²⁰J約1,200倍
1時間前秒速約12,682m約1.26×10²³J約60万倍

1日前の条件で落ちた破片は、3回それぞれ10個・3個・17個でした。真ん中の10個なら99%がよけますが、全部がよけるわけでも、3回とも99%がよけるわけでもありません。1時間前の散らすエネルギーは、元の衝突エネルギーの約4割に達します。

結果の読み方と、現実との違い

押してよけるには、地球との出会い方を変えます。一方、砕く場合は、破片が地球に着く前に十分広がる必要があります。細かくするだけでは、地球へ届くエネルギーはほとんど減りません。

今回の計算は、条件を比べるために単純にしています。

  • 地面の層・山・水を入れず、一様な岩としました。空気による減速や分裂、飛び出した岩への空気抵抗も入れていません。
  • 穴の式の係数は1.161に固定しました。研究では係数に幅があり、約115kmは誤差のない確定値ではありません。
  • 小惑星の回転や太陽の光の圧力は扱っていません。100kmのすれすれを「よけた」とする基準も、実際の作戦ではもっと余裕が必要です。
  • 砕く実験は、岩を壊すためのエネルギーを別に必要とせず、全部を散らすために使える、非常に都合のよい仮定です。

よくある問い

直径10kmの隕石が落ちたら、人類は生き残れますか?

この計算からは答えられません。穴と降ってくる岩、天体の動きは計算しましたが、熱・揺れ・津波・気候・人への被害は含めていないためです。地球の道すじがほとんど変わらないことを、地上が安全という意味には使えません。

小さい小惑星なら、DART数機でよけられますか?

同じ道すじ、同じ密度で、10年前に押す条件なら、直径0.15kmの小惑星は約6機分でした。直径10kmの答えをすべての大きさに当てはめることも、この約6機をどの小惑星にも使える作戦と考えることもできません。必要な勢いは質量に比例し、同じ密度なら質量は直径の三乗に比例します。

これから本当にサハラ砂漠へ落ちるのですか?

いいえ。場所も小惑星の道すじも、この計算のために選びました。「今の地球に衝突したら」という問いを試す架空の設定で、実在する小惑星の衝突予報ではありません。

Webで条件を変えて試す

このページの「試す」から、同じ計算を動かせます。最初のお題は「7年前に、どれだけ速さを足せばよけられる?」です。

まずは足す速さを変えて「押す!」を試してください。よけられたら、押す時期を10年前・1年前へ変え、必要な速さを比べます。次に直径を0.15kmにして、DARTの数がどう変わるかを見てください。「砕く」「落ちたら」では、散らすエネルギーや衝突条件も変えられます。

残り時間と大きさのどちらを変えると、何の数字が動くでしょうか。この記事の表を出発点に、自分でも確かめてみてください。

ショート

出典

動画とこのページで使った事実・数字の出どころです。

  1. NASA JPL Horizons(DE441。太陽・惑星・月の位置と速度。基準時刻は2000年1月1日12:00 TDB。確認日:2026-10-10)ssd.jpl.nasa.gov/horizons
  2. JPL Astrodynamic Parameters(DE440のGM(重力計算に使う、万有引力定数と天体の質量の積)。確認日:2026-10-10)ssd.jpl.nasa.gov/astro_par.html
  3. NASA NSSDC Earth Fact Sheet(地球の質量・半径。版・更新年の記録なし。確認日:2026-10-10)nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/earthfact.html
  4. 国土地理院(令和7年(2025年)7月1日時点の日本の面積377,980.29km²。「日本の約8倍」の比較に使用。確認日:2026-10-10)gsi.go.jp/kihonjohochousa/kihonjohochousa61016.html
  5. Dalyほか・Nature(2023年、616巻443–447頁、表1。DARTの衝突時質量579.4kg、速度6.1449km/s、標的の体積と同じ球の直径151m。確認日:2026-10-10)doi.org/10.1038/s41586-023-05810-5
  6. Makadiaほか・Science Advances(2026年、12巻eaea4259。太陽を回る周期の変化150±20ms、運動量の倍率β=2.0±0.3。確認日:2026-10-10)doi.org/10.1126/sciadv.aea4259
  7. NASA・DARTの太陽周回軌道の変化(上の研究の解説。確認日:2026-10-10)nasa.gov/missions/dart/nasas-dart-mission-change…
  8. CTBTO・ツァーリ・ボンバ(1961年の実験の爆発規模50メガトン。企画時はWebアーカイブの写しで本文を確認。ページの版・更新年の記録なし。確認日:2026-10-10)ctbto.org/specials/testing-times/30-october-1961-…
  9. Collins・Melosh・Marcus・Earth Impact Effects Program(2005年、Meteoritics & Planetary Science 40巻817–840頁。式1(エネルギー)、21・27(穴)、47(厚さ)、49–52(飛ぶ岩)。質量は球の体積と密度から算出。この回では地表重力g=9.81m/s²、穴の係数1.161、境目3.2kmを使用。確認日:2026-10-10)doi.org/10.1111/j.1945-5100.2005.tb00157.x
  10. 著者側の論文PDF(2013年の正誤表つき。829頁の厚さの下限の説明を含む。企画時確認日:2026-10-10)impact.ese.ic.ac.uk/static/effects.pdf
  11. Impact: Earth!・同じ著者の計算ページ(同じ入力で、穴・エネルギー・岩の到着時間・厚さが一致することを企画時に確認。確認日:2026-10-10)purdue.edu/impactearth
  12. NIST・SP 811 付録B.8(TNT 1トン=4.184×10⁹Jの単位換算。版・更新年の記録なし。確認日:2026-10-10)nist.gov/pml/special-publication-811/nist-guide-…
  13. FAI・宇宙との境界(100kmの基準。企画時はWebアーカイブで確認。版・更新年の記録なし。確認日:2026-10-10)fai.org/page/icare-boundary
  14. スイッチの音の録音素材:“A relay switch being activated.” bassmosphere(CC0)freesound.org/people/bassmosphere/sounds/384698
  15. Moon Fact Sheetnssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/moonfact.html
  16. 月が遠ざかる速さ:NASAnasa.gov/missions/laser-beams-reflected-between-…
  17. 核のエックス線で押す研究:Moore, N. W. et al. (2024) Nature Physics 20, 1833.doi.org/10.1038/s41567-024-02633-7
  18. 6,600万年前の衝突:Natural History Museumnhm.ac.uk/discover/how-an-asteroid-caused-extinct…
  19. 小惑星の見張り:NASAscience.nasa.gov/planetary-defense-overview
  20. NASAnasa.gov/solar-system/near-earth-object-observat…
  21. NASA JPLjpl.nasa.gov/news/nasa-space-telescope-finds-fewer-a…
  22. NEO Surveyorscience.nasa.gov/mission/neo-surveyor
  23. エベレストの高さ:Guinness World Recordsguinnessworldrecords.com/world-records/highest-mountain

声・音・絵

  • 音楽:「楽しく軽快に」yuki/「考え中」「突破口の手がかり的なBGM」鷹尾まさき/「Shall we meet?」MATSU(OpenTracks)

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