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5分でわかる名作#17

よだかの星(宮沢賢治) よだかは、何から逃れたかった?|5分でわかる名作 #17

この話の要点

  1. よだかは、鷹の脅しと虫の命を奪う苦しみを抱え、遠い空を目指します。
  2. 弟の引き止めや星々の拒絶を経て昇り続け、体は静かな青い光になります。
  3. 最後の光に救いを見るか、悲しさを感じるかが、読む人に残されます。

ほかの言い方よだかの星 あらすじよだかの星 結末よだかの星 なぜ泣いた

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解説

以下は結末までのあらすじです。事実は宮沢賢治『よだかの星』の日本語原文(青空文庫)に沿っています。原作に章番号や章題はありません。この記事の場面名は、読む場所を探しやすくするための区切りです。

30秒で分かるあらすじ

鳥たちに見下されるよだかは、鷹から名前を変えなければ殺すと脅されます。その夜、のみこんだ虫がもがくのを感じ、自分もまた多くの命を奪っていることに苦しみます。遠い空へ行こうと決めたよだかは、弟のかわせみに別れを告げ、太陽に願い出ます。太陽に星へ頼むよう言われ、夜空の星々を訪ねますが、どこにも受け入れられません。それでも空へ昇り続けたよだかは、ついに青い光となって静かに燃え始めます。最後の光をどう読むかは、物語に残された問いです。

登場する鳥たち

  • よだか:まだらな顔と大きな口を持ち、羽虫を食べる鳥です。足は弱い一方、翼はとても強く、鳴き声も鋭いと描かれます。ほかの鳥はその姿を見下しますが、鋭い爪やくちばしのないよだかを恐れません。
  • 鷹:よだかの名に自分の名と同じ「たか」が入っていることを嫌い、改名を迫ります。自分の爪やくちばしを誇り、力の差を突きつける相手です。
  • 弟のかわせみ:魚を食べる鳥です。よだかが遠くへ行くと告げると、引き止めます。
  • 蜂すずめ:花の蜜を食べる鳥です。物語ではよだかの弟ですが、遠くにいて、別れの場面に同席しません。
  • ひばりやめじろなどの小鳥:よだかに冷たい態度を示します。めじろの親子の出来事は、よだかの回想として語られます。

ここでの兄弟関係は物語の設定です。現代の鳥の分類を説明するものではありません。挿絵の灰褐色と錆色の体色も、原文の「まだら」をもとに今回決めた見た目です。

鷹とよだかの姿。鉤形のくちばしを持つ鷹と、低く座るよだか。
鷹とよだかの姿。鉤形のくちばしを持つ鷹と、低く座るよだか。

場面を追うあらすじ

侮辱と改名の要求

ひばりは、よだかを見かけると首をそむけます。もっと小さな鳥は、大きな口をからかいます。よだかには、相手を怖がらせる爪もくちばしもありません。

ただし、飛ぶ力まで弱いわけではありません。風を切って飛ぶ姿が鷹に似て、鳴き声にも似たところがあるため、よだかという名がついたと語られます。鷹とは兄弟でも親類でもありません。

ある夕方、鷹がよだかの家にやって来ます。改名先として命じるのは市蔵(いちぞう)です。ただ呼び名を変えるだけではありません。「市蔵」と書いた札を首から下げ、鳥たちの家をおじぎして回り、新しい名前を告げろと言います。あさっての朝までに従わなければ、つかみ殺すという脅しです。

よだかは、そんなことはできないと答えます。鷹が去った後、よだかは、巣から落ちためじろの赤ん坊を助けたことを思い出します。巣へ戻してやったのに、親めじろは赤ん坊をよだかから引き離し、よだかを笑ったのでした。親切をした記憶にも、拒まれた痛みが残っています。

本文には、よだかが改名を受け入れ、札を掛けて回る場面はありません。命じられたことと、実際にしたことを分けて読む必要があります。

虫への気づき

鷹が去った同じ日の薄暗い空へ、よだかは飛び出します。翼を張り、大きな口へ羽虫を捕らえます。やがて甲虫がのどに入り、激しくもがきます。

原文では、この甲虫の経験が続けて二度描かれます。最初は背中がぞっとし、次には胸がどきっとして、大声で泣き出します。出来事を一度の「かわいそう」という気持ちで片づけず、体の違和感が思いへ変わる流れも読んでみたいところです。

よだかは、毎晩たくさんの虫が自分に殺され、その自分も今度は鷹に殺されると考えます。食べなければ生きられないことと、自分の命を奪われる怖さが重なります。虫を食べずにいようと考えても、鷹の脅しは迫っています。そこで、遠い空の向こうへ行こうと思うのです。

よだかから虫へは「食べる」、鷹からよだかへは「殺すと脅す」。行為の向きを分けた関係図。
よだかから虫へは「食べる」、鷹からよだかへは「殺すと脅す」。行為の向きを分けた関係図。

この図の鷹の矢印は脅しを表しています。鷹が実際によだかを殺した、あるいは食べたという出来事の図ではありません。

弟との別れ

山焼けの赤い火が広がる中、よだかは弟のかわせみを訪ねます。かわせみは、兄がいなくなれば自分はひとりになると言い、行かないよう頼みます。

よだかは、どうしても取らなければならない時のほかは、むやみに魚を取らないでほしいと頼みます。魚を一切食べるな、という言葉ではありません。虫の場面での苦しみが、弟への頼みへつながっています。

それでも、よだかは別れを告げ、遠くの蜂すずめへの伝言を託して帰ります。誰にも気にかけられなかったから旅立ったとだけ説明すると、この引き止めを取り落としてしまいます。弟の思いが届いているのに別れる点に、簡単には説明できない痛みがあります。

太陽から星々へ

夏の短い夜が明けます。よだかは巣を片づけ、羽を整え、太陽へ向かいます。焼けて死んでも構わないから連れて行ってほしいと願います。これは、追い詰められたよだか自身の言葉です。

太陽はよだかのつらさに触れ、今夜、星に頼むよう言います。太陽が願いをかなえ、よだかを星に変える場面ではありません。よだかは野原へ落ち、夢のような状態になります。夢のような描写には鷹に体をつかまれる感覚もありますが、現実に襲撃された出来事と決めつけないようにします。

すすきの葉から落ちた露で目を開くと、もう夜です。よだかは再び飛び上がり、星に願います。順番と応答は次のとおりです。

  1. 西のオリオン:歌を続け、よだかを相手にしません。
  2. 南の大犬座:青・紫・黄にまたたき、鳥の翼では途方もなく遠いと退けます。
  3. 北の大熊星:静かに、頭を冷やしてくるよう言います。
  4. 東の鷲の星:星になるには身分や金が要ると言います。

全員が同じように笑った、という場面ではありません。無視、遠さ、静かな突き放し、身分と金。それぞれ違う形で居場所への願いが閉ざされます。方角や距離はこの物語の空として読み、現実の星図や宇宙旅行の計算とは分けます。

最後の上昇

力を落としたよだかは翼を閉じ、地面へ落ちていきます。しかし、地面に触れる寸前に、のろしのように上がります。地面にぶつかってから飛び直すのではありません。

鷹のように高い鳴き声を上げると、野原や林の鳥たちは目を覚まして震えます。よだかは上へ、上へと昇ります。山焼けの火は小さくなるのに、星の大きさは変わりません。飛んだことは地上の小ささで分かるのに、望む場所が近づいたとは感じられない描写です。

寒さと薄い空気に、翼はしびれます。やがて、落ちているのか昇っているのかさえ分からなくなります。本文はここでよだかの最後を告げながら、安らかな心もちと、少し笑った口元を描きます。

原文を読む道順。鳥たちと名前、虫、弟、太陽、四つの星、最後の上昇、青い光。
原文を読む道順。鳥たちと名前、虫、弟、太陽、四つの星、最後の上昇、青い光。

結末:青い光になったよだか

ここからも結末の内容です。しばらくして目を開いたよだかは、自分の体が青い美しい光となり、静かに燃えるのを見ます。隣はカシオピア座、すぐ後ろは天の川です。

今でもまだ燃えています。宮沢賢治『よだかの星』、結末の最終文(青空文庫)

藍色の空に静かに燃える青いよだかの光。文学的な想像図であり、実測の星図ではありません。
藍色の空に静かに燃える青いよだかの光。文学的な想像図であり、実測の星図ではありません。

本文は、鷹の謝罪も、ほかの鳥の改心も、弟との再会も描きません。地上の問題がすべて片づいたという終わりではないのです。一方で、最後の光は静かで美しく、よだかには安らかな心もちも描かれます。この両方を残して読むと、結末は一つの言葉に収まりにくくなります。

読み返す三つの問い

殺される恐怖と、虫を殺す自分への気づきはどうつながる?

鷹の脅しだけなら、よだかは一方的に苦しめられる側です。けれど虫の場面では、自分が命を奪う側でもあることに思い至ります。どちらか一方を消さず、のどの違和感から涙へ至る順を追うと、空へ向かう理由を読み直せます。

引き止める弟がいるのに、なぜ別れる?

かわせみは兄を拒みません。それでもよだかは、魚について頼み、別れを決めます。弟の愛情がなかったと決める代わりに、よだかが抱えた苦しみが、愛情だけではほどけないものとして描かれているのかを考えられます。これは本文の行動から立てる問いで、作者の意図を断定する説明ではありません。

安らかさと、燃え続ける光をどう読む?

最後の光を、苦しみから離れた姿として読むことはできます。ただ、飛ぶ体が限界を迎えるまでの寒さやしびれも、地上に残る弟も、本文から消えません。「救い」か「悲しさ」かを急いで一つに決めるより、どちらの読みを支える言葉があるか、原文へ戻って確かめてみてください。

よだか自身の願いを、そのまま読む人への勧めにする必要はありません。現実の苦しみも身を滅ぼせば解決する、と結論づける話としてこの記事は扱いません。

よくある問い

鷹は、なぜ名前を変えさせようとしたのですか?

よだかの名に自分と同じ「たか」が含まれることを嫌がるためです。原文の冒頭には、よだかの強い翼と鋭い鳴き声が鷹に似るという名前の説明があります。鷹の来訪の場面では、爪やくちばしを比べさせ、改名を命じます。

よだかは、実際に市蔵へ改名したのですか?

改名を受け入れ、札を首に掛けたという場面はありません。鷹は市蔵の札を掛け、皆の所をおじぎして回るよう要求しますが、よだかはできないと答えます。要求された行動と、実際の行動を混同しないで読みます。

よだかは、なぜ虫を食べて泣いたのですか?

虫をのみこんだ後、多くの虫が自分に殺され、その自分が今度は鷹に殺されるつらさを考えるからです。虫を食べる場面の直後の心の声に、そのつながりが書かれています。単に虫の味が嫌いになったのではありません。

弟のかわせみは、よだかを嫌っていたのですか?

別れの場面では、かわせみは兄に行かないでほしいと頼みます。ひとりになる寂しさを語り、さらに待つよう呼びかけます。ほかの鳥たちの侮辱と、弟の態度は分けて読む必要があります。

最後によだかは、どうなりますか?

よだかの最後が描かれた後、体が青い光となり、星として今も燃えていると結ばれます。地上へ助かって戻る話ではありません。「幸せになったか」「救われたか」は、出来事のあらすじとは分けて考える問いです。

原文を読む

青空文庫『よだかの星』全文は無料で読めます。図書カードからも本文へ進めます。

読み返すなら、まず本文内で「一疋の甲虫が」を探してみてください。体が感じた違和感から涙へ変わる流れが分かります。次に「それからしばらくたって」で始まる結末の段落へ進み、最後の一文まで読んでみてください。要約では省いた繰り返しや、言葉の響きにも出会えます。

出典:宮沢賢治『よだかの星』/青空文庫。底本『新編 銀河鉄道の夜』新潮文庫・新潮社。入力:佐々木美香、校正:野口英司。挿絵・図はタメラボ制作。鳥の外形参考:Jason Thompson, Caprimulgus jotaka.jpg, CC BY 2.0(写真自体は掲載していません)。

出典

動画とこのページで使った事実・数字の出どころです。

  1. 宮沢賢治『よだかの星』の日本語原文(青空文庫)aozora.gr.jp/cards/000081/files/473_42318.html
  2. 図書カードaozora.gr.jp/cards/000081/card473.html
  3. Caprimulgus jotaka.jpgcommons.wikimedia.org/wiki/File:Caprimulgus_jotaka.jpg
  4. CC BY 2.0creativecommons.org/licenses/by/2.0

声・音・絵

  • 声:Irodori-TTS(選定済みの語り手、MIT)。英語版:Kokoro(bm_fable、Apache-2.0)。
  • Music (OpenTracks): 「茶屋にて」MATSU/「縁側」siroimu/「百花繚乱」/「藁の記憶」

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