「たった1%」は、割合だけでは判断できません
投資信託の目論見書やネット証券の商品ページには、必ず「信託報酬 年率〇%」という表示があります。1%前後の数字を見て、「そのくらいなら誤差では」と感じる人は少なくありません。
しかし1%という表示は割合であって、金額ではありません。同じ1%でも、元本が変われば実額は変わりますし、その1%が一度きりでなく毎年かかり続けるなら、複利の効果で年数が長いほど影響は大きくなります。ここでは、割合を実額に直す手順と、毎年1%がかかり続けた場合の減り方を、計算式つきで示します。
まず実額に直す:同じ1%でも金額は元本で決まる
信託報酬が年率1%の商品を保有しているとき、1%が実際にいくらになるかは元本次第です。
| 元本 | 年率1%の実額 |
|---|---|
| 10万円 | 1,000円 |
| 100万円 | 10,000円 |
| 1,000万円 | 100,000円 |
元本が10倍になれば、1%の実額も10倍になります。表示上は同じ「1%」でも、積立額が大きくなるほど、負担する金額そのものは大きくなっていきます。
毎年かかり続けると、単純な掛け算にはなりません
信託報酬は一度きりの費用ではなく、保有している間、毎年かかり続けます。ここで注意が必要なのは、「1%が10年続くなら10%減る」という単純な掛け算にはならない、という点です。
信託報酬が資産残高に対して毎年1%差し引かれるモデルで考えると、1年ごとに残高へ0.99を掛ける形になります。これは複利で積み上がるので、n年後に残っている割合は 0.99 のn乗です。
- 10年後:0.99の10乗 ≈ 0.904 → 累計で約9.6%の目減り
- 20年後:0.99の20乗 ≈ 0.818 → 累計で約18.2%の目減り
- 30年後:0.99の30乗 ≈ 0.740 → 累計で約26.0%の目減り
10年なら「1%×10年で10%」に近い数字ですが、20年・30年と期間が伸びるほど、単純な掛け算(20%・30%)からは離れ、複利の分だけ実際の目減りは緩やかになります。ただし緩やかとはいえ、30年で約26%という数字は「誤差」と呼べる大きさではありません。
利率の差でも、複利は年をまたぐほど広がります
信託報酬そのものではなく、運用利率の差として置き換えても、同じ複利の性質が働きます。元本1,000万円を、年率5%で運用した場合と年率4%で運用した場合を比べます。
- 1年目の差:1,000万円×5% − 1,000万円×4% = 10万円
- 30年後の差:1,000万円×1.05の30乗 − 1,000万円×1.04の30乗 ≈ 4,322万円 − 3,243万円 = 約1,078万円
1年だけ見れば10万円の差でも、複利で30年積み上がると、その差は約100倍を超える約1,078万円にまで広がります。差が毎年の残高にも効いてくるため、期間が長いほど差そのものが加速度的に開いていく、というのが複利の性質です。
数字を見るときの3つの確認
金融商品の手数料や利率の数字を見るときは、次の3つに分けて確認すると、割合だけを見て判断することを避けられます。
- 元本はいくらか――同じ1%でも、実額は元本で決まります。
- 1%は実額でいくらか――割合を、自分の元本に当てはめて金額に直します。
- その差は一度だけか、毎年続くのか――一度きりの費用と、毎年かかり続ける費用(信託報酬など)では、期間が長いほど影響の大きさが変わります。
割合だけで「小さい」「大きい」と判断せず、まず実額に直し、次に期間を掛け合わせて考える。これが、手数料や利率の数字を読むときの基本です。
本記事内の計算は、いずれも Python(0.99 ** n および principal * (1 + rate) ** n の複利計算式)で検算しています。




