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ふるさと納税の「6割ルール」は経費の上限ではありません自治体に残る「寄附金活用可能額」が6割以上——10月からの初年度は52.5%

2026-09-16 ・ 読了目安 7分

ふるさと納税の「6割ルール」は経費の上限ではありません|自治体に残る「寄附金活用可能額」が6割以上——10月からの初年度は52.5%

10月から6割ルール」という見出しを、経費の上限の話として読むと、向きが逆になります。 改正で6割になるのは自治体が使える残りの額であって、経費が6割まで使えるという意味ではありません。この記事では、総務省の告示(令和8年総務省告示第145号)と事務連絡(令和8年6月26日・総税市第71号)、税制改正関連資料に載っている行をそのまま並べて、「6割ルール」の読み方を整理します。

6割の本体——「寄附金活用可能額」が受領額の6割以上

告示が載せ替えた法律の行(地方税法・第2条第2号イ)はこう読めます。

地方団体が指定対象期間において受領する第一号寄附金の額の合計額から、同期間における第一号寄附金の募集に要する費用の額として総務大臣が定めるところにより算定した額を控除して得た額(寄附金活用可能額)が、同期間において受領する第一号寄附金の額の合計額の百分の六十に相当する金額以上であること。

(総務省 令和8年総務省告示第145号・改正後の条文より整理)

つまり並びはこうです。

受領額 100% − 募集に要する費用 = 寄附金活用可能額 → この残りが6割以上

(同上より整理)

6割は「経費の上限」ではなく、経費を引いたあとに残る額の下限です。 「経費を6割以内」と読むと、経費が6割使える制度になってしまう——企画の冒頭に置いた「向きを間違えなければいい」の話はここです。

10月からいきなり6割ではない——初回は52.5%から

告示の基準は6割ですが、適用は段階的です

寄附金活用可能額の割合を段階的に引き上げることとしており、令和8年指定対象期間については、当該期間における寄附金活用可能額が、当該期間において受領する第1号寄附金の額の合計額の100分の52.5に相当する金額以上であることとされていること

(総務省 総税市第71号・令和8年6月26日

指定対象期間の開始寄附金活用可能額の割合
令和7年指定(従来)50.0%
令和8年指定(令和8年10月1日〜)52.5%
令和9年指定55.0%
令和10年指定57.5%
令和11年指定以降60.0%

(総務省 令和8年度税制改正関連資料の段階的適用イメージより整理)

10月1日から始まる指定対象期間の初回は52.5%で、6割になるのは令和11年指定からです。 事務連絡は、令和8年指定対象期間の割合が52.5%未満となった地方団体については令和9年10月1日から開始する指定対象期間において指定の取消しの対象となり得ると述べています——初年度の未達が即日の取り消しにつながる並びではありません。

従来の「募集費用5割」の基準は削除された

改正前の基準は、募集に要する費用の合計額が受領額の百分の五十以下であること(5割基準)でした。改正でこの基準は削られ、新しい6割基準(活用可能額の下限)に置き換わっています。

ただし移行の行もあります。

令和8年指定対象期間に係る指定に当たっては、令和7年指定対象期間において、募集費用が寄附金受領額の合計額の5割以内となっていることが要件となっていること。……実績調査において、募集費用が寄附金受領額の合計額の5割を超過したことが判明した地方団体については、指定取消しの対象となり得る

(総税市第71号)

5割基準が消えたのは、これからの基準の話で、令和7年分の実績はまだ5割で判定される——この2つの行を混ぜないことが、読み直しのいちばん大切な部分です。

「募集に要する費用」には、ポータル手数料も人件費も全部入る

募集に要する費用には、寄附金に係る受領証の発行事務に要する費用・ワンストップ特例に係る申請書の受付事務に要する費用・ふるさと納税に関する業務に係る職員の人件費(ふるさと納税以外の業務も兼任している職員に係るものを含む)・ポータルサイトの運営事業者に対して支払う費用・事務を委託するために事業者に対して支払う費用など……全て含まれる

(総税市第71号より整理)

事務連絡が例示する費用の分類は、返礼品等の調達・返礼品等の送付(運送料・梱包)・広報・決済(クレジットカードの手数料・金融機関の取扱手数料)・事務(職員の人件費・ポータルへの掲載委託料・ワンストップ特例の事務・受領証の事務)です。計上方法は寄附金受領日ベースに統一されています。

返礼割合3割以下の基準は、変更なし

返礼品等の調達に要する費用の額は、返礼品等に係るいわゆる原価や定価ではなく、「地方団体が現に支出した額」であって……消費税……地方消費税……金額がある場合には、これらの金額を含めること。

(総税市第71号)

返礼品の調達費用が寄附金の3割以下という基準は残ります(税制改正資料にも「返礼品 上限3割(変更なし)」と置かれています)。なお、返礼品提供事業者への奨励金や補助金、地方団体のプロモーション費用等の名目であっても、実質的に返礼品の調達に充当されて調達数量が増えるならその経費も含めた額が調達費用となる——名目の分類では3割を外れない、という読み方まで書かれています。

実績の数字——令和6年度の受入1兆2,728億円の内訳

令和6年度受入実績 1兆2,728億円——返礼品 3,208億円25.2%)/事務費等 1,676億円13.2%)/送付・広報・決済 1,017億円8.0%)/地方団体財源 6,826億円53.6%)/ポータルサイト運営事業者に支払った費用 1,656億円

(総務省 令和8年度税制改正関連資料より整理)

事務連絡は、ポータルサイト手数料の実質的な額が令和6年度に1,379億円・手数料率11.5%に達していると述べ、令和8年5月22日に総務省からふるさと納税協会の会員企業へ引下げを要請したことに触れています。募集費用の推移は令和6年度実績46.4%——5割の上限内ではあるものの、余りは7.4ポイントしかないという数字の並びです(この最後の一言はこの記事での引き算です)。

控除の計算は、この改正の行にはありません

告示第145号が載せ替えるのは自治体の指定基準の部分で、寄附者が受け取る控除額の計算の行は出てきません。つまり「6割ルール」は寄附者側の控除の式を動かすものではありません。なお、同じ令和8年度税制改正には別の柱として、高所得者の特例控除額に定額上限(給与収入1億円相当)を設けるという行が税制改正資料に並んでいます——「この改正に控除の変更が一切無い」ではなく、6割ルールの部分には控除の行が無いと読み分けてください。

間違えやすい3つの点

①「6割」を経費の上限と読まない。 6割は、経費を引いた「寄附金活用可能額」が受領額に対して満たすべき下限です。

②「10月から6割」と読まない。 令和8年10月1日からの指定対象期間の基準は52.5%で、55%57.5%60%と段階的に上がります。

③「5割基準は無くなった」で、令和7年分の実績も無くなったと読まない。 令和8年指定の要件として、令和7年指定対象期間の募集費用が5割以内であることが必要で、実績調査の超過は取消しの対象になり得ます。

この記事で扱っていないこと

  • 指定取消しの手続の詳細・取消し期間(3年以内)の運用
  • 地場産品基準の明確化(付加価値基準の証明書・一覧表の公表の行。令和8年10月1日以後に開始する指定対象期間から適用)
  • 100万円以上の支払先の公表の様式の詳細
  • 高所得者の特例控除の上限の詳しい計算(給与収入1億円相当という行の読み方は、別の記事の題材です)
  • ポータルサイト手数料の引下げのその後の調査結果(要請の事実までしか、この2つの文書にはありません)

出典