お金の制度図解

106万円の壁は2026年10月に撤廃予定消えるのは5つのうち1つだけ、週20時間の線は残ります

2026-09-15 ・ 読了目安 13分

106万円の壁は2026年10月に撤廃予定|消えるのは5つのうち1つだけ、週20時間の線は残ります

「106万円の壁が無くなる」と聞いて、年収を気にせず働けるようになると読んだ方へ。厚生労働省と日本年金機構のページだけで確かめたところ、そう読めるのは半分だけでした。

先に、いちばん誤解されている3つを書きます。

  • 2026年10月に無くなるのは「月8.8万円以上」という賃金の条件だけです。週20時間・学生でない・2か月超の雇用見込みは残ります。勤め先の規模の条件も最後は無くなりますが、そちらは2035年10月まで9年かけた別の予定表です。
  • 条件の数字は「年収106万円」ではなく「月額8.8万円」です。 厚生労働省の Q&A も「月額8.8万円(年収約106万円)」と、月額を先に書いて年収を括弧に入れています。 8.8万円×12=105.6万円で、106万円は丸めた呼び名です。判定は月額で行われるので、年収だけを見ていると外します。
  • 130万円の壁は別の制度で、こちらは変わりません。 日本年金機構は「収入要件の変更はありません」と明記しています。106万が消えても、130万は残ります。

「106万円の壁」とは、5つの条件のことです

パート・アルバイトの方が厚生年金保険・健康保険に入る条件は、厚生労働省の特設サイトに5つ並んでいます。

#条件2026年10月にどうなるか
1勤め先の従業員数が51人以上(2027年9月まで)2026年10月には変わらない。こちらも最後は無くなるが、別の予定表で2035年10月までかけて段階的に下がる(下の表)
2週の所定労働時間が20時間以上残る
3学生ではない残る
4所定内賃金が月額8.8万円以上撤廃予定 ←これだけ
52か月を超えて雇用される見込み残る

残る4つには、公式の但し書きが付いています。 ここを知らないと、自分は対象外だと思い込んだままになります。

条件例外として対象になる
学生ではない卒業後も引き続き同じ勤め先で働くことが決まっている人、休学中の人、定時制・通信制の人、いわゆる社会人大学院生など
2か月を超える雇用の見込み契約が2か月以内でも、更新が予定されている、または同じ条件の人が更新された実績がある場合。ただし季節的な業務・臨時的事業の事業所は対象外の場合あり

原文は「(2026年10月に賃金要件を撤廃予定)」です。Q&A のほうにも「※❸の要件は、最低賃金以上で週20時間以上働く場合、この要件を満たすことになるため、収入を意識する必要はありません。(この要件は2026年10月に撤廃予定)」とあります。

なぜ撤廃するのかも、公式に書かれています。 Q&A の Q4「なぜ月額8.8万円(年収約106万円)を気にせず、働くことができるのですか?」への答えがこれです。

時給1,016円以上で週20時間以上働く方は月額8.8万円(年収約106万円)以上の要件を満たすことになります。全ての都道府県で最低賃金が時給1,016円以上となりましたので、この要件を意識する必要はありません。なお、2026年10月にこの要件を撤廃する予定です。

分かれ目の時給は1,016円で、すでに全都道府県がこれを上回っています。2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円、いちばん低い宮崎県でも1,085円です。

時給週20時間で働いたときの月額(52÷12週で換算)
公式の分かれ目1,016円約88,000円(=要件ちょうど)
2026年度 全国加重平均1,177円約102,000円
2026年度 最低(宮崎)1,085円約94,000円

(月額は、公式の時給から筆者が52÷12週で換算したものです。)条件として働かなくなった状態が先にあり、撤廃の予定がそれに続いています。

いつから? ——要件ごとに日付が違います

「2026年10月」は賃金要件だけの日付です。勤め先の規模の条件は、別の予定表で下がっていきます。

時期対象になる勤め先の従業員数
2027年9月まで51人以上
2027年10月〜36人以上
2029年10月〜21人以上
2032年10月〜11人以上
2035年10月〜すべての企業等(10人以下も対象)

根拠は令和7年(2025年)の年金制度改正です。従業員数は「1年のうち6月間以上、厚生年金保険の被保険者の総数が基準を超えることが見込まれる企業等」で数え、法人なら法人全体で判断します。パート本人を含めた全員数ではなく、フルタイムとその4分の3以上働く人の数です。

つまり2026年10月時点では、勤め先が51人以上でなければ、賃金要件が消えても対象になりません。 ここを取り違えると、「10月から社会保険に入ることになった」と身構えて損をします。自分の勤め先が対象かどうかは、日本年金機構の「事業所検索システム」で誰でも確認できます。

週20時間未満の人は、何も変わりません

検索でよく打たれている「106万円の壁 週20時間未満」に、はっきり答えます。

週の所定労働時間が20時間未満なら、2026年10月以降も社会保険の加入対象になりません。 撤廃されるのは賃金の条件だけで、時間の条件は残るからです。

所定労働時間は就業規則や雇用契約書で判断します。決まっていない場合の数え方も公式に書かれています。

状況数え方
短期的・周期的に変動するその周期の1週間の所定労働時間の平均
1か月単位で決まっている1か月の所定労働時間を 52/12 で割る
繁忙期など特定月だけ長短があるその月を除いて判断

「1か月◯時間」の契約で働いている方は、◯ × 12 ÷ 52 が20時間以上かどうかが分かれ目です。月87時間なら週20.08時間で対象、月86時間なら週19.85時間で対象外——1時間で変わります。

106万円の壁と130万円の壁は、まったく別の制度です

検索候補に「106万円の壁 130万円の壁 違い」「106万円の壁と130万円の壁の違い」が両方入るくらい、混ざりやすいところです。決めているものが違います。

106万円の壁130万円の壁
決めていること自分が厚生年金・健康保険の被保険者になるか家族の健康保険の被扶養者でいられるか
判断する数字所定内賃金 月8.8万円(2026年10月に撤廃予定年間収入 130万円未満
ほかの条件週20時間・学生でない・2か月超・勤め先の規模同居なら扶養者の収入の半分未満/別居なら仕送り額未満
2026年の変更あり(賃金要件の撤廃)なし(日本年金機構「収入要件の変更はありません」)
超えたら自分で保険料を払い、年金が増える扶養から外れ、自分で国民健康保険・国民年金に入る

そして、いちばん効くのがこの一文です。

年収が130万円未満であっても、4分の3基準または4要件を満たした場合は、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。

130万円未満でも、106万の側の条件を満たせば加入します。 130万円だけを見て「まだ扶養の中」と考えるのは、順番が逆です。先に106万の5条件を見て、そこに当たらなかった人だけが130万円の話になります。

被扶養者の年収要件は、年齢で3段階あります

130万円という数字も、全員に当てはまるわけではありません。

扶養される人年間収入の要件
一般130万円未満
19歳以上23歳未満(配偶者を除く)150万円未満(2025年10月1日以降の認定から)
60歳以上または障害者180万円未満

19〜22歳の引き上げは令和7年度税制改正を踏まえたもので、年齢は認定日が属する年の12月31日時点で判定します。2026年11月に19歳になる学生なら、その年(暦年)の要件は最初から150万円未満です。

すでに認定済みの人にも影響があります。 2025年9月30日以前に認定されていた19〜22歳の方は、年間収入が150万円以上見込まれる場合に「削除(非該当)」の届出が必要です。

入ると、手取りはどれだけ減って、年金はどれだけ増えるか

厚生労働省は「手取りかんたんシミュレーター」を公開しています(月額給与88,000円以上210,000円未満が対象)。前提の料率も公式に書かれています。

保険料・税率(2026年4月時点)本人の負担
厚生年金保険料18.3%(平成29年9月から固定)9.15%(労使折半)
健康保険料9.9%(協会けんぽ全国平均)4.95%
子ども・子育て支援金0.23%0.115%
雇用保険料0.5%(一般の事業)本人分は別途

厚生労働省は、同じ月額給与98,000円で3つの状態を並べた試算を出しています。 図の中の数字をそのまま写します。

加入前(国民年金・国民健康保険)扶養の範囲で働く加入後(社会保険)
月額給与98,000円98,000円98,000円
健康保険料3,200円(国民健康保険)0円5,000円
年金保険料18,000円(国民年金)0円9,000円(厚生年金)
雇用保険料500円500円500円
所得税0円0円0円
手取り月額(概算)76,300円97,500円83,500円

(この試算の国民年金保険料18,000円は丸めた額です。令和8年度の実際の額は月17,920円と、同じページに書かれています。)

ここに、あまり書かれていないことが2つあります。

  • 扶養から出る人は、月14,000円減ります(97,500円 → 83,500円)。よく言われる「手取りが減る」はこの比較です。
  • すでに自分で国民年金と国民健康保険を払っている人は、月7,200円増えます(76,300円 → 83,500円)。減るどころか増えます。 勤め先が半分払うからです。

「社会保険に入ると損をする」は、扶養に入っている人の話です。自分で国保と国民年金を払っている人にとっては、加入は手取りが増えたうえに年金も増えます。

折半の意味を取り違えないでください。 給与から引かれる額と同じ額を、勤め先も払っています。厚生年金で言えば、本人9.15%に対して会社も9.15%。払った保険料の半分は自分の負担ではありません。

増える側も公式に数字があります。老齢基礎年金は40年加入で年額847,200円(令和8年度)。厚生年金はこれに上乗せされ、長く働くほど増えます

比べる相手も見ておきます。扶養から外れて自分で国民年金に入る場合、保険料は月17,920円(令和8年度)で、これは全額自己負担です。→ 詳しくは国民年金の育児免除、2026年10月開始

厚生年金は労使折半、国民年金は全額自己負担。 同じ「年金保険料」でも、負担の構造が違います。

まとめ——2026年10月に、あなたは何をすればいいか

あなたの状況2026年10月に起きること
週20時間未満で働いている何も変わりません
週20時間以上・勤め先51人以上・月8.8万円未満新たに加入対象になります
週20時間以上・勤め先51人以上・月8.8万円以上すでに加入対象です(変化なし)
週20時間以上・勤め先50人以下まだ対象外。36〜50人は2027年10月から
学生(休学・定時制・通信制を除く)対象外のまま

確かめる順番は、収入ではなく時間からです。 週20時間に届いているか → 勤め先の規模 → 学生かどうか。金額を先に見ると、2026年10月以降はどこにも答えがありません。

出典

厚生労働省と日本年金機構のページだけを根拠にしています。社会保険労務士事務所のコラム・保険会社の解説・まとめサイトの数値は使っていません。

  • 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」従業員のみなさま/社会保険加入の要件 — 5つの要件、企業規模の段階表(2027年10月・2029年10月・2032年10月・2035年10月)、「2026年10月に賃金要件を撤廃予定」

https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/jugyouin/taisho/

  • 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」パート・アルバイトの方への社会保険の適用について — 令和7年年金制度改正が根拠であること、従業員数の数え方(6月間以上・法人全体・フルタイムの4分の3以上)

https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/seido/tanjikan/

  • 厚生労働省「適用拡大Q&A」 — 要件の原文、「(この要件は2026年10月に撤廃予定)」、所定労働時間の判断方法(平均・52/12・特定月の除外)

https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/qa/

  • 厚生労働省「手取りかんたんシミュレーター」(従業員のみなさま/手取り額と保障の違い) — 月額給与98,000円の3状態の試算(76,300円/97,500円/83,500円)、対象は月額88,000円以上210,000円未満、料率は2026年4月時点、協会けんぽ全国平均9.9%・子ども・子育て支援金0.23%・雇用保険0.5%、国民年金保険料17,920円/月(令和8年度)

https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/jugyouin/henka/

  • 厚生労働省「社会保険加入のメリット」 — 老齢基礎年金 年額847,200円(40年加入・令和8年度)、傷病手当金・出産手当金

https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/jugyouin/merit/

  • 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大」(更新日 2026年4月1日)— 事業所検索システムの案内

https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/tekiyokakudai.html

  • 日本年金機構 年金Q&A「年収130万円未満という収入要件に変更はありますか」— 「収入要件の変更はありません」「130万円未満であっても、4分の3基準または4要件を満たした場合は…被保険者となります」

https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/tekiyoukakudai/tanjikan/fuyounintei.html

  • 日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」 — 150万円未満、12月31日時点の年齢で判定、認定済みの方の削除届

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2025/202508/0819.html

  • 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 — 保険料率18.3%で固定、労使折半、標準報酬月額1等級(8万8千円)〜32等級(65万円)

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html

  • 日本年金機構「家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」 — 被扶養者の範囲と届出

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20141202.html

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「106万円」という表記について。 公式の要件は「所定内賃金が月額8.8万円以上」です。厚生労働省の Q&A は「月額8.8万円(年収約106万円)」と括弧つきで併記しており、判定は月額で行われます。 本文でもその順で書いています。