「20万回」の正しい読み方
「20万回」は実在する数字ですが、出どころは Fold8 ではありません。 Samsung Global Newsroom が 200,000 folds と書いているのは、2019年の初代 Galaxy Fold の折りたたみ試験を紹介した記事です。原文はこうです。
This test, which examines whether the Galaxy Fold can outlast 200,000 folds and unfolds (or around five years of use, if used 100 times a day), takes a full week to complete.
| 言われ方 | 公式の記載 |
|---|---|
| Fold8 は20万回の開閉に耐える | ✗ Fold8 についてそう書かれたページは見つからない |
| 20万回まで壊れない | ✗ 「20万回の折りたたみに耐えるかを調べる試験」と書かれている |
| 初代 Galaxy Fold で20万回の試験を1週間かけて実施した | ✅ これが書かれていること |
| Fold8 の開閉回数・試験の温度・速度・試験機関 | 公式の記載なし |
Samsung は Fold8 について、落下・繰り返しの開閉・加圧・湿気・異物の混入を含む100項目以上の信頼性評価を行ったとも説明しています。
Samsung 自身は20万回を「1日100回使って約5年ぶん」と言い換えています。1日50回なら約11年ぶんという計算になりますが、これは初代 Galaxy Fold の試験の話で、しかも「試験でその回数を折った」という意味です。
Fold8 について Samsung が公表しているのは、回数ではなく項目数のほうです。 開閉回数を知りたい人にとっては物足りない答えですが、無い数字を他機種から借りてくるより、無いと書くほうが正確です。
IP48 ——「4」と「8」は別のことを言っています
IP コードは2桁で、1桁目が固形物、2桁目が水です。それぞれ別の等級で、片方が高くても他方は関係しません。
| 桁 | 等級 | 意味 |
|---|---|---|
| 1桁目 | 4 | 直径1.0mm以上の外来固形物に対する保護 |
| 1桁目 | 5 | 動作や安全を阻害する量のじんあいが侵入しない |
| 1桁目 | 6 | じんあいが侵入しない(防塵) |
| 2桁目 | 8 | 潜水状態での使用に対する保護 |
Galaxy Z Fold8 は IP48 です。 水側は最高等級の8ですが、固形物側は4——つまり 5(耐じんあい)にも 6(防塵)にも達していません。 砂浜やポケットの中の粉じんは、等級の想定外です。
Samsung が示す水の試験条件は 1.5m の淡水に30分間、静止状態。これを超える時間・深さ・水圧は保証されず、海水・プール水・石けん水・油・アルコールは避けるよう案内されています。防水性能は永続的ではなく、経年や摩耗で低下するとも書かれています。
そして、ここがいちばん実務的です。
IP48 であることと、水没による故障が無料で直ることは、別の話です。
Samsung の修理規定は、保証期間内でも有料になる条件として「水などの液体こぼれ・水没・落下」を明記しています。等級は「どこまで試験したか」で、保証は「何を無料で直すか」です。
なお規格そのものにも2026年に変更があります。JIS C 60529「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」の制定年月日は 2026年1月20日です(日本産業標準調査会のデータベースで確認。主務大臣は経済産業)。従来の JIS C 0920 は、同じ検索では引けませんでした。「IPX8」の X は0級という意味ではなく、その桁を指定していないという記号です。
折り目について、メーカーは何と言っているか
| メーカー | 公式の表現 |
|---|---|
| Samsung Japan | 「画面中央の折りたたみ部分にはシワが見える場合があります」 |
| Samsung(Fold8) | "a less visible crease"(より目立ちにくくした) |
| Apple(iPhone Duo) | Nano-texture 仕上げで「折り目を目立たせない」「圧力やよれを最小限に抑えられます」 |
どちらのメーカーも「無い」とは書いていません。 薄いガラスとフィルムを曲げる構造上、見える場合があることを前提にしたうえで、見えにくくしたという説明です。
iPhone Duo の開閉回数については、Apple 公式に記載がありません。 耐久性については、グレード5チタニウム、100以上の部品からなるヒンジ、Ceramic Shield、IP68、他の業界素材より最大40%高い剛性のカバー層などが挙げられていますが、何回折れるかという数字は公表されていません。
画面の保護フィルムは、剥がしてはいけません
Samsung の案内は明確です。
メインディスプレイに貼り付けてある保護フィルムは、画面破損防止のため、剥がさずにご利用ください。
剥がすと、再貼付時に有償修理になる場合があるとされています。他のフィルムやシールを重ねて貼ることも案内されていません。
一方で、この純正フィルムは 「消耗品」で「交換が可能」 とも書かれています。通常の使用でも傷・気泡・浮きが生じる場合があり、貼り替えは Samsung カスタマーサポート、店頭修理サービス、通信事業者への問い合わせが案内されています。
「剥がすな」と「消耗するので交換できる」は矛盾しません。 自分で剥がすのではなく、交換してもらうものです。
壊れたとき、いくらかかるか
Samsung Japan がメーカー版 SIM フリーモデルについて公表している金額です(2026年9月9日更新・税込)。
| 機種 | ディスプレイ交換 |
|---|---|
| Galaxy Z Fold8 | 87,670円〜 |
| Galaxy Z Fold8 Ultra | 95,370円〜 |
ドコモ・au・ソフトバンクで購入した製品は、この表の対象外です。購入した通信事業者へ問い合わせることになります。
通常保証は購入日から1年。正常な使用状態での故障は無料修理ですが、保証期間内でも有料になる条件として、水没・落下、改造、非純正部品に起因する故障、埃・錆・カビなど使用環境に起因する故障、Samsung 指定外の修理工場での修理などが列挙されています。
それで、買っていいのか
公式の記載だけから言えることを整理します。
- 折り目が見えるのが我慢できないなら、やめたほうがいい。 メーカーが「見える場合がある」と書いているものを、レビューで「気にならない」と言われて買うのは、判断を人に預けることになります。
- 砂や粉じんの多い場所で使うなら、向いていません。 IP48 の固形物側は4で、防塵等級ではありません。
- 水没は等級があっても有料修理になりえます。 画面交換が9万円前後であることと合わせて考える金額です。
- 開閉回数は、試験値であって寿命の約束ではありません。 日に50回で11年ぶんという計算は、目安としては使えますが、保証ではありません。
逆に、上の4つを承知したうえでなら、公式情報の範囲で不意打ちになる要素は見当たりません。 メーカーは折り目も、等級の限界も、フィルムの扱いも、修理費用も公表しています。調べれば分かることばかりで、隠れている条件は見つかりませんでした。
この記事で触れた製品
【紹介した製品・関連リンク】
【公式】 Samsung Galaxy Z Fold8 256GB / 512GB / 1TB Galaxy AI対応 https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/g00urh9o.9p2xy109.g00urh9o.9p2xz067/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fsamsungonline%2Fsmp_zfold8%2F&m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Fsamsungonline%2Fi%2F10000038%2F&rafcid=wsc_i_is_cc9dc05c-7d3c-48ae-8ab5-fd93719ab06f
Supported by Rakuten Developers https://developers.rakuten.com/(商品情報は楽天ウェブサービスで取得しています)
出典
メーカー公式ページと規格の記述だけを根拠にしています。個人のレビュー記事・まとめサイト・報道の数値は使っていません。
- Samsung Global Newsroom「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra, Fold8 and Flip8: Foldables, Perfected for Every Way of Living」— Fold8 の仕様。開閉回数の記載はありません(本文を検索して確認)
- Samsung Global Newsroom「[Video] New Form Factor, New Rules: Watch the Galaxy Fold’s Folding Test」— 200,000 folds と「1日100回で約5年」。初代 Galaxy Fold の記事です
https://news.samsung.com/global/video-new-form-factor-new-rules-watch-the-galaxy-folds-folding-test
- Samsung Newsroom 日本「【インタビュー】最新Samsung Galaxy Zシリーズを支える ハードウェア開発の舞台裏」— 100項目以上の信頼性評価試験
https://news.samsung.com/jp/interview-fold8-hw
- Samsung Newsroom U.K.「Galaxy Z Fold8 Is the Perfect Device for Your Favourite Content — Here’s Why」— "a less visible crease"
- Samsung Japan「スマートフォンの折りたたみ式ディスプレイと保護フィルムについて教えてください。」— シワが見える場合がある/フィルムを剥がさない/消耗品で交換可能(畳まれた欄の中にあります)
- Samsung Japan「防塵と防水等級について教えてください」— IP48、等級表、1.5m30分の試験条件、異物の注意
https://www.samsung.com/jp/support/mobile-devices/galaxy-phone-water-resistance/
- Samsung Japan「メーカーブランドスマートフォンの修理代金」(2026年9月9日更新)— ディスプレイ交換 87,670円〜/95,370円〜
- Samsung Japan「スマートフォン修理規定」— 保証期間内でも有料になる条件
https://www.samsung.com/jp/support/mobile-devices/repair-regulations/
- Apple 日本「Apple、iPhone Duo を発表」「iPhone Duo」— 耐久性の構造/折り目を目立たせない
https://www.apple.com/jp/newsroom/2026/09/apple-unveils-iphone-duo/
- 日本産業標準調査会(JISC)データベース検索 → JIS検索(規格番号に「C 60529」と入れて一覧表示)— JIS C60529「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」制定年月日 2026/01/20。検索結果は入力を送って表示されるため、結果ページの URL は固定できません
https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISSearch.html
各 URL は実際に開いて確かめました(2026-09-14)。ページが開けること、そして引いた記述や数値がそのページに載っていることの両方を見ています——アドレスが生きているだけでは出典になりません。
この確認で、記事のほうを直しました。 「20万回」を Galaxy Z Fold8 の数字として書いていましたが、Samsung がその数字を出しているのは初代 Galaxy Fold の記事で、Fold8 の仕様ページ・日本の製品ページ・開発者インタビューのいずれにも開閉回数は書かれていません(本文を検索して確認)。出典を足す作業が、記事の間違いを見つけました。
